ナトリウムは、体液の浸透圧やpH(酸とアルカリのバランス)、体内の水分量の調節、また、神経や筋肉の正常な働きにも欠かせないミネラルです。
一方で、日本人が過剰摂取しているミネラルでもあり、摂り過ぎない工夫も必要です。
そんなナトリウムの働きや効果、食べ物、欠乏症や過剰症、食塩相当量や基準値などについて、簡単にまとめてみました。
ナトリウムとは
人間は、ナトリウム(Na)を塩素(Cl)とともに、塩化ナトリウム(NaCl)の形で食品から摂取しています。塩化ナトリウムとは食塩のことです。成人の体内にはおよそ100グラムのナトリウムが含まれています。
摂取されたナトリウムは小腸から吸収され、90%以上が尿として排泄されます。他には汗として排泄されます。便からも排泄されますが、その量はごくわずかです。
通常、ナトリウム摂取量の増減に応じて尿中排泄量も増減し、体液中のナトリウム濃度は一定に保たれます。
なお、激しい肉体労働などで発汗量が増大したり、下痢などが続くと、体内のナトリウムが不足するので、食塩の必要量が増大します。
ナトリウムの働き
ナトリウムはほとんどが細胞外液に存在し、細胞内液に存在するカリウムと濃度のバランスを取ることで、体液のpHや細胞の浸透圧を調整し、細胞内外の水分量を適切に保つ働きがあります。
細胞内と細胞外のカリウムとナトリウムの濃度差は「ナトリウム・カリウムポンプ」と呼ばれる細胞膜の機構によって常に一定に保たれています。
このポンプは、細胞内にナトリウムイオンが増えたらこれを細胞外に排出し、カリウムイオンを細胞内に取り込む働きをしています。
ナトリウムは胆汁、膵液、腸液など消化液の材料にもなっています。
また、ナトリウムは神経の伝達や、心筋や筋肉の収縮、糖やアミノ酸の腸管からの吸収などにも関わっています。
日本人の場合は欠乏することはまれですが、高温下で激しい肉体労働を行なうなど、多量に汗をかいた場合に、汗とともにナトリウムが失われます。
その場合、食欲不振や倦怠感、疲労感、吐き気、筋肉痛やけいれんなどの症状が出ることがあります。
日本人はナトリウムを過剰摂取している
ナトリウムの1日の必要量は約1~2グラムとされています。
しかし、日本人は1日当たり平均10~12グラム程度の食塩を摂取していると言われ、過剰摂取が懸念されています。
ですので、日本人の場合は、特に普段の食事における減塩対策が必要になってきます。
ナトリウムの1日あたりの目標量、過剰症
ナトリウムの1日あたりの目標量
18歳以上のナトリウムの1日あたりの目標量(g、食塩相当量)は、以下のとおりです。
18歳以上の男性 8.0g未満
18歳以上の女性 7.0g未満
(妊婦、授乳婦とも付加量なし)
ナトリウムは、食品からはほとんどが食塩(塩化ナトリウム)の形で摂取されるため、食塩相当量で目標量が設定されています。
なお、食塩(塩化ナトリウム)の分子量は58.5、ナトリウムの原子量は23なので、ナトリウム量の食塩相当量への換算式は以下のようになります。
食塩相当量(g)=ナトリウム(g)×58.5/23=ナトリウム(g)×2.54
たとえば、ナトリウムを0.6グラム摂取するためには、食塩を0.6×2.54=15.24グラム摂取すればよいという計算になります。
ナトリウム摂取量の詳しい表を以下に掲げます。
ナトリウムと過剰症
日本人は1日当たり平均10~12グラムの食塩を摂取していると言われ、減塩対策が必要です。
食塩を過剰に摂取すると、むくみや腎機能障害を起こし、胃がんのリスクも増大します。
また、高血圧を起こし、動脈硬化などの血管疾患にかかりやすくなります。
ナトリウムの上手な摂り方
ナトリウムに関しては、日本人のほとんどが過剰摂取の方を気にしなければなりませんので、減塩対策を考える必要があります。
しょう油やみそ、ドレッシングなどの調味料の量を減らす、漬物や干物などの塩蔵品の頻度を減らす、などが効果的です。
また、ラーメンやうどんなどの麺類は、麺自体にも、汁にも塩分が多く含まれますので、これらの食品を控えるのもよいでしょう。
麺類については特に、汁を飲まないようにすることで、塩分とともに脂質の摂り過ぎも防げます。
他には、外食や惣菜、冷凍食品など加工食品にも食塩が多く含まれる傾向がありますので、これらの利用もなるべく控えましょう。
なお、カリウムには余分なナトリウムを排泄する働きがありますので、カリウムを多く含む野菜や果物、大豆製品などをしっかり摂取することも、有効な対策になります。
ナトリウムを多く含む食品
ナトリウムはほとんどが食塩(NaCl、塩化ナトリウム)の形で摂取されています。したがって、食塩を多く含む食品はもれなくナトリウムが豊富ということになります。
具体的には、しょう油や味噌などの調味料、漬物や干物や塩辛などの塩蔵品などに多く含まれます。また、麺類やパンにも多く含まれますので、注意が必要です。
一方、自然の食品にはそれほど多く含まれません。
ナトリウムを多く含む食品の、可食部100グラムあたりの含有量(g、食塩相当量)は以下のとおりです。
即席中華麺(非油揚げ)6.9
中華スタイル即席カップ麺(油揚げ)6.9
手延そうめん(乾)5.8
フランスパン 1.6
食塩 99.1
顆粒おでん用 56.1
固形ブイヨン 43.2
豆板醤 17.8
薄口しょう油 16.0
濃口しょう油 14.5
淡色辛味噌(米)12.4
ウスターソース 8.4
梅干(塩)22.1
塩鮭 1.8
大根・ぬかみそ漬け 3.8
シラス干し(微乾燥品)4.1
シラス干し(半乾燥品)6.6
イワシ丸干し 3.8
生ハム(長期熟成)5.6
ビーフジャーキー 4.8
ナトリウムの欠乏症・過剰症まとめ
ナトリウムが欠乏したり過剰になったりすると、以下のような症状を引き起こします。
ナトリウムの欠乏症
血圧低下
倦怠感、疲労感
筋力低下
けいれん
食欲減退
ナトリウムの過剰症
むくみ
腎機能障害
高血圧
動脈硬化
胃がん
ナトリウムまとめ
ナトリウムについて、以下に簡潔にまとめます。
ナトリウムの主な働き
神経伝達、筋肉の収縮、体液のpH(酸とアルカリのバランス)の調整、体液の浸透圧の調整、体液量の調整
ナトリウムを多く含む食品
みそやしょう油などの調味料、漬物や干物などの塩蔵品、麺類やパン、冷凍食品などの加工食品などに豊富です。
調味料(みそ、しょう油、ブイヨンなど)
麺類(ラーメン、そうめんなど)
パン(フランスパンなど)
漬物(たくあん、ぬかみそ漬けなど)
干物(イワシ丸干しなど)
ナトリウムの1日あたり目標量
単位はg、食塩相当量で換算
18歳以上の男性 8.0g未満
18歳以上の女性 7.0g未満
(妊婦、授乳婦とも付加量なし)
ナトリウムを摂り過ぎない工夫
みそ、しょう油、ドレッシングなどの調味料を控える。
麺類、パンは食塩を多く含むので、注意する。
外食や惣菜、冷凍食品なども控える。
カリウムはナトリウムを排出する働きがあるので、カリウムを多く含む食品(野菜、果物、大豆製品など)を摂取する。
↓↓各ビタミン・ミネラルの働き、多く含む食べ物や食べ方、欠乏症や過剰症などについて
主要(多量)ミネラル
カルシウムと骨、ビタミンD、エストロゲン
リンと骨、細胞膜、DNA、インスタント食品
マグネシウムと骨、心筋梗塞、生活習慣病
ナトリウムとむくみ、高血圧、カリウム、減塩対策
カリウムと高血圧、脳卒中、ナトリウム、腎臓
微量ミネラル
鉄分とヘム鉄、非ヘム鉄、不足の症状、女性の摂取量
亜鉛と味覚、成長、生殖機能、インスリン
銅と貧血、白髪、抜け毛、鉄や亜鉛との関係
マンガンと骨の成長、糖脂質代謝、性機能
ヨウ素と甲状腺ホルモン、乳幼児の発達
セレンと抗酸化作用、水銀やヒ素やカドミウムの毒性
脂溶性ビタミン
ビタミンAとβカロテン、抗酸化作用
ビタミンDと骨とカルシウム
ビタミンEと過酸化脂質と抗酸化作用
ビタミンKと骨と血液凝固と新生児
水溶性ビタミン
ビタミンB1とアルコール
ビタミンB2と脂質の代謝
ナイアシンとアルコール、トリプトファン
ビタミンB6とアミノ酸、つわり、月経前症候群
葉酸と妊娠、DNA、動脈硬化
ビタミンB12と葉酸の関係、欠乏症、消化吸収の特徴
パントテン酸と糖質・脂質の代謝、神経伝達、善玉コレステロール
ビオチンと卵白、アトピー、血糖値、胎児