銅はエネルギー代謝や活性酸素の除去、神経伝達物質の産生に関わり、体内における鉄の吸収や利用に欠かせないミネラルです。
貧血のほか、抜け毛や白髪を防ぐのに欠かせないミネラルでもあります。
そんな銅の働きや多く含む食べ物、欠乏症や過剰症などについて簡単にまとめてみました。
銅とは
銅は成人の体内に約80mgほど存在し、そのうちの約50%が筋肉や骨、約10%が肝臓にあります。
食品中の銅のほとんどは小腸から吸収され、肝臓に運ばれて貯蔵されます。
細胞中の銅は、主にセルロプラスミンなどのたんぱく質と結合した形で存在しており、銅イオン単体は少ないです。
過剰となった銅は、主に胆汁とともに便として排泄されます。吸収量の約85%が便として、約5%が腎臓から尿として排泄されます。
銅の働き
銅は約10種類の酵素の材料として、エネルギー代謝や、神経伝達物質の産生、活性酸素の除去など多くの役割を果たしており、過酸化脂質の増加の防止、乳児の成長、骨や血管の強化などに欠かせないミネラルです。
銅は鉄とともに
また銅は、鉄を血液中のトランスフェリンに渡すことで、腸管から鉄を吸収し、全身に鉄を供給するのを助ける働きがあります。
トランスフェリンとは血液中にあるたんぱく質で、鉄と結合して血液中を流れることで、全身に鉄を供給する働きがあります。
さらに、銅は骨髄で鉄をヘモグロビンに合成する代謝反応にも関わっており、体内での鉄の吸収や利用に欠かせないミネラルです。
そのため、鉄を十分に摂取しても、銅が不足すると、ヘモグロビンの合成がうまくいかず、銅欠乏性貧血を引き起こします。
銅と白髪、抜け毛
銅はメラニン色素の合成に必須のチロシナーゼという酵素の合成に関わっています。そのため、銅が不足すると、白髪が増えます。
また、銅が不足すると、髪の毛が抜け落ちたり、縮れたりなど症状が出ます。
ほかに、銅が欠乏すると、糖代謝やコレステロール代謝の異常、動脈硬化、骨粗しょう症などの骨異常、成長障害、心血管系や神経系の異常、うつ症状、血圧上昇、成長障害などが見られるようになります。
なお、通常の食事で銅が不足することはほぼありませんが、銅を添加していない高カロリー輸液や、銅濃度の低いミルクや経腸栄養などにより、欠乏症を生じることがあります。
メンケス病
銅の先天的な代謝異常を示すメンケス病というものがあります。血液中の銅濃度が減少し、肝臓や脳の銅量の低下を引き起こします。
メンケス病の症状としては、知能低下や発育遅延、中枢神経障害などが見られます。
銅の1日あたりの推奨量、耐容上限量
銅の1日あたりの推奨量
18歳以上の銅の1日あたりの推奨量及び耐容上限量(mg)は、以下のとおりです。
男性
18~29歳 0.9 10
30~49歳 1.0 10
50~69歳 0.9 10
70歳以上 0.9 10
女性
18~29歳 0.8 10
30~49歳 0.8 10
50~69歳 0.8 10
70歳以上 0.7 10
(妊婦は+0.1、授乳婦は+0.5)
左が推奨量、右が耐容上限量です。
詳しい表を以下に掲げます。
銅と過剰症、耐容上限量
銅の体内量は、吸収量と排泄量に応じて厳密に調整されており、過剰の分は主に糞便として排泄されます。
そのため過剰症の心配はほぼありません。
ただし、ウィルソン病という先天的な銅代謝異常では、肝臓や脳や角膜などに銅が蓄積し、肝機能障害、神経障害、精神障害、関節障害、角膜のカイザー・フライシャー輪などが見られます。
銅を多く含む食品
銅やレバーや肉類、魚介類、ナッツ類、豆類などに多く含まれます。ただし、その他の植物性の食品にはほとんど含まれません。
牛レバー 5.30
豚レバー 0.99
鶏レバー 0.32
豚タン 0.20
牛ヒレ肉 0.09
イイダコ 2.96
ホタルイカ(燻製)12.00
スルメ(加工品)0.99
牡蠣 0.89
ソラマメ 1.20
インゲン豆 0.75
大豆(国産 乾)1.07
凍り豆腐(乾)0.57
アーモンド(フライ味付け)1.11
くるみ(炒り)1.21
ピスタチオ(炒り味付け)1.15
ピーナッツ(炒り)0.69
銅の上手な摂り方
銅は多くの食品に含まれているため、一般的な食生活を送っていれば、不足することはありません。
ただし、銅は亜鉛と拮抗し、ビタミンCにより吸収が阻害されるので、これらのサプリメントの過剰摂取には気をつけましょう。
亜鉛の働きや効果、多い食品、不足や過剰摂取の症状は?
ビタミンCの働きや効果、食べ物、摂取量、不足や大量摂取の影響は?
銅の欠乏症・過剰症まとめ
銅が欠乏したり過剰になったりすると、以下のような症状を引き起こします。
銅の欠乏症
銅欠乏性貧血
コレステロール代謝異常
動脈硬化
骨粗しょう症などの骨異常
成長障害
心血管系や神経系の異常
毛髪の色素脱落(白髪)
脱毛
うつ症状
血圧上昇
成長障害
メンケス病
・知能低下
・発育遅延
・中枢神経障害
銅の過剰症
ウィルソン病
・肝機能障害
・神経障害
・精神障害
・関節障害
・角膜のカイザー・フライシャー輪
銅まとめ
銅について、以下に簡潔にまとめます。
銅の主な働き
酵素の材料となる、エネルギー代謝、神経伝達物質の産生、活性酸素の除去、鉄の吸収・利用促進
銅を多く含む食品
レバー、肉類、イカ・タコなどの魚介類などに豊富に含まれます。
レバー(牛、豚など)
肉類(豚タン、牛ヒレなど)
魚介類(タコ、イカ、牡蠣など)
豆類(ソラマメ、インゲン豆)
大豆製品(凍り豆腐など)
ナッツ類(アーモンド、くるみ、ピスタチオなど)
銅の1日あたりの推奨量および耐容上限量
18歳以上の銅の1日あたりの推奨量及び耐容上限量(mg)
男性
18~29歳 0.9 10
30~49歳 1.0 10
50~69歳 0.9 10
70歳以上 1.0 10
女性
18~29歳 0.8 10
30~49歳 0.8 10
50~69歳 0.8 10
70歳以上 0.7 10
(妊婦は+0.1、授乳婦は+0.5)
左が推奨量、右が耐容上限量
銅を食べ物から上手に摂る方法
銅は多くの食品に十分に含まれており、一般的な食生活で不足することはない。
ただし、亜鉛やビタミンCにより吸収が阻害されるので、これらのサプリメントの摂り過ぎに気をつけること。
↓↓各ビタミン・ミネラルの働き、多く含む食べ物や食べ方、欠乏症や過剰症などについて
主要(多量)ミネラル
カルシウムと骨、ビタミンD、エストロゲン
リンと骨、細胞膜、DNA、インスタント食品
マグネシウムと骨、心筋梗塞、生活習慣病
ナトリウムとむくみ、高血圧、カリウム、減塩対策
カリウムと高血圧、脳卒中、ナトリウム、腎臓
微量ミネラル
鉄分とヘム鉄、非ヘム鉄、不足の症状、女性の摂取量
亜鉛と味覚、成長、生殖機能、インスリン
銅と貧血、白髪、抜け毛、鉄や亜鉛との関係
マンガンと骨の成長、糖脂質代謝、性機能
ヨウ素と甲状腺ホルモン、乳幼児の発達
セレンと抗酸化作用、水銀やヒ素やカドミウムの毒性
脂溶性ビタミン
ビタミンAとβカロテン、抗酸化作用
ビタミンDと骨とカルシウム
ビタミンEと過酸化脂質と抗酸化作用
ビタミンKと骨と血液凝固と新生児
水溶性ビタミン
ビタミンB1とアルコール
ビタミンB2と脂質の代謝
ナイアシンとアルコール、トリプトファン
ビタミンB6とアミノ酸、つわり、月経前症候群
葉酸と妊娠、DNA、動脈硬化
ビタミンB12と葉酸の関係、欠乏症、消化吸収の特徴
パントテン酸と糖質・脂質の代謝、神経伝達、善玉コレステロール
ビオチンと卵白、アトピー、血糖値、胎児