ヨウ素は甲状腺ホルモンの構成成分として、生殖や成長や発達を調節し、エネルギー代謝を促進させる働きを持つ重要なミネラルです。
特に乳幼児など成長期の子供の精神や身体の正常な発育には欠かせません。
そんなヨウ素の働きや多く含む食べ物、欠乏症や過剰症などについて簡単にまとめてみました。
ヨウ素とは
ヨウ素は人体に約20mg程度あり、そのうちの70~80%が甲状腺に存在します。
摂取したヨウ素のほとんどは消化管から吸収され、血漿中にヨウ化物イオンとして存在し、甲状腺に取り込まれます。
甲状腺に取り込まれたヨウ素は、トリヨードチロシンやチロキシンなどの甲状腺ホルモンの成分となります。
血漿中のヨウ素や、甲状腺ホルモンから遊離したヨウ素は、最終的にその90%以上が尿中に排泄されます。
そのため尿中排泄量は、ヨウ素の摂取状態を把握する良い指標となります。
ヨウ素の働き
ヨウ素はトリヨードチロシン、チロキシンなどの甲状腺ホルモンを構成する成分となります。
甲状腺ホルモンは、生殖や成長や発達などを調節するほか、交感神経を刺激して、呼吸や心臓、神経の活動を高め、酸素の消費を促進し、エネルギー代謝を活発にする働きがあります。
また、細胞の活動を高めて、細胞の新陳代謝や、胎児の脳の発達や成長、骨形成やたんぱく質の合成を促進し、特に乳幼児など成長期の子供の発育には欠かせないホルモンです。
ヨウ素の欠乏症
ヨウ素が慢性的に欠乏すると、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌が亢進し、甲状腺肥大から甲状腺腫が引き起こされ、甲状腺機能が低下します。
甲状腺機能が低下すると、疲労感や新陳代謝の鈍化が生じます。
妊娠中にヨウ素が欠乏すると、死産や流産のほか、胎児の先天異常、先天性甲状腺機能低下症などを引き起こし、精神遅滞や低身長、言語障害やけいれんを引き起こします。
ヨウ素と海産物と日本人
ヨウ素は海水中に豊富にあるため、昆布をはじめとする藻類や魚介類などの海産物に多く含まれます。
日本人は伝統的に海産物を多く摂取しているため、ヨウ素の1日摂取量が約1~3mgと、世界的に見ても突出しています。そのため、日本人にヨウ素が欠乏することはまれです。
世界的には、中央アフリカなどの内陸地や、土壌中のヨウ素が欠乏している地域などに、ヨウ素の欠乏症が多く見られます。
ヨウ素の1日あたりの推奨量、耐容上限量
ヨウ素の1日あたりの推奨量と耐容上限量
18歳以上のヨウ素の1日あたりの推奨量および耐容上限量(μg)は、以下のとおりです。(1000μg=1mg、1000mg=1g)
18歳以上の男女 130μg 3000μg
左が推奨量、右が耐容上限量
(妊婦の付加量+110μg、耐容上限量2000μg。授乳婦の付加量+140μg)
妊娠中は胎児への影響を考え、耐容上限量が非妊娠時よりも低いことに注意。
詳しい表を以下に掲げます。
ヨウ素と過剰症、耐容上限量
ヨウ素を過剰に摂取すると、甲状腺ホルモンの分泌が亢進し、甲状腺腫や甲状腺機能低下を引き起こします。
アメリカ・カナダや中国など外国では1日約1.5mg前後の摂取で甲状腺機能低下や甲状腺腫のリスクがあることが報告されています。
一方、日常的にその水準以上(1日1~3mg)のヨウ素を摂取している平均的な日本人に、甲状腺機能低下や甲状腺腫が発症することは極めてまれです。
そのため、日本人の成人については、健康障害が発現しない1日3.0mg(3000μg)が耐容上限量として設定されています。
なお、妊娠中の母親がヨウ素を過剰に摂取すると、新生児にもこれらの症状が発症します。胎児はヨウ素の過剰により敏感なので、妊娠時の耐容上限量は、非妊娠時(3.0mg)よりも低く(2.0mg)設定されています。
また、授乳婦においては、十分なデータがないため耐容上限量は設定されていませんが、間欠的な高濃度のヨウ素の摂取(たまに昆布や昆布だしを大量に摂取するなど)は非授乳時よりも控えるべきとされています。
ヨウ素を多く含む食品
ヨウ素は海水中に多く存在するため、昆布、わかめ、ひじきなど藻類や、魚介類に豊富に含まれています。
ヨウ素を多く含む食品の、可食部100グラムあたりの含有量(μg)は以下のとおりです。
まこんぶ(素干し)200000
ひじき(乾)45000
カットわかめ 8500
焼き海苔 2100
あわび 180
牡蠣 73
マダラ 350
タラコ(生)130
サンマ 21
イワシ 24
カツオ 25
ブリ 24
ヨウ素の上手な摂り方
ヨウ素は海産物に豊富に含まれているため、伝統的な日本食で海産物を多く摂っていれば、ヨウ素が欠乏することはありません。
西洋風の食事やインスタント食中心の人は、ヨウ素が不足しがちになりますので、海産物を意識的に多く摂るようにしましょう。
ヨウ素の欠乏症・過剰症まとめ
ヨウ素が欠乏したり過剰になったりすると、以下のような症状を引き起こします。
ヨウ素の欠乏症
甲状腺肥大
甲状腺腫
甲状腺機能低下
疲労感
新陳代謝の鈍化
(妊娠中の欠乏)
死産
流産
胎児の先天性甲状腺機能低下症
・精神遅滞
・低身長
・言語障害
・けいれん
ヨウ素の過剰症
甲状腺肥大
甲状腺腫
甲状腺機能低下
ヨウ素まとめ
ヨウ素について、以下に簡潔にまとめます。
ヨウ素の主な働き
甲状腺ホルモンの合成、エネルギー代謝、骨や末梢組織の形成、乳幼児の正常な成長や発達
ヨウ素を多く含む食品
藻類など海産物に豊富です。
藻類(昆布、わかめなど)
貝類(牡蠣、あわびなど)
魚類(マダラ、サンマなど)
ヨウ素の1日あたりの推奨量
18歳以上のヨウ素の1日あたりの推奨量および耐容上限量(μg)は、以下のとおりです。(1000μg=1mg、1000mg=1g)
18歳以上の男女 130μg 3000μg
左が推奨量、右が耐容上限量
(妊婦の付加量+110μg、耐容上限量2000μg。授乳婦の付加量+140μg)
妊娠中は胎児への影響を考え、耐容上限量が非妊娠時よりも低いことに注意。
ヨウ素を食べ物から上手に摂る方法
ヨウ素は海産物に豊富なので、海藻や魚介類を多く摂取すること。
伝統的な日本食で海産物をしっかり摂っていれば、ヨウ素が不足することはない。
↓↓各ビタミン・ミネラルの働き、多く含む食べ物や食べ方、欠乏症や過剰症などについて
主要(多量)ミネラル
カルシウムと骨、ビタミンD、エストロゲン
リンと骨、細胞膜、DNA、インスタント食品
マグネシウムと骨、心筋梗塞、生活習慣病
ナトリウムとむくみ、高血圧、カリウム、減塩対策
カリウムと高血圧、脳卒中、ナトリウム、腎臓
微量ミネラル
鉄分とヘム鉄、非ヘム鉄、不足の症状、女性の摂取量
亜鉛と味覚、成長、生殖機能、インスリン
銅と貧血、白髪、抜け毛、鉄や亜鉛との関係
マンガンと骨の成長、糖脂質代謝、性機能
ヨウ素と甲状腺ホルモン、乳幼児の発達
セレンと抗酸化作用、水銀やヒ素やカドミウムの毒性
脂溶性ビタミン
ビタミンAとβカロテン、抗酸化作用
ビタミンDと骨とカルシウム
ビタミンEと過酸化脂質と抗酸化作用
ビタミンKと骨と血液凝固と新生児
水溶性ビタミン
ビタミンB1とアルコール
ビタミンB2と脂質の代謝
ナイアシンとアルコール、トリプトファン
ビタミンB6とアミノ酸、つわり、月経前症候群
葉酸と妊娠、DNA、動脈硬化
ビタミンB12と葉酸の関係、欠乏症、消化吸収の特徴
パントテン酸と糖質・脂質の代謝、神経伝達、善玉コレステロール
ビオチンと卵白、アトピー、血糖値、胎児