カリウムは、体液の浸透圧やpH(酸とアルカリのバランス)、体内の水分量の調節、また、神経や筋肉の正常な働きにも欠かせないミネラルです。
日本人が過剰摂取しがちなナトリウム(食塩由来)の排泄を促し、高血圧や脳卒中のリスクを減らす効果もあり、非常に重要なミネラルです。
そんなカリウムの働きや効果、食べ物、欠乏症や過剰症、摂取量の基準値などについて、簡単にまとめてみました。
カリウムとは
カリウムは体重の約0.2%(60キロなら約120グラム)含まれており、そのうち約98%が細胞内液に、残りの約2%が細胞外液に含まれています。
摂取されたカリウムは、ほぼ全量が小腸から吸収されます。
通常、カリウム摂取量の増減に応じて尿中排泄量も増減し、体液中のカリウム濃度は一定に保たれます。
ただし、高血糖や糖尿病などで尿の排泄量が増えると、尿中へのカリウム排泄が増大し、体内のカリウムが不足します。また、下痢や嘔吐などでもカリウムは失われます。
なお、カリウムは植物の細胞内に多く存在し、植物においても欠かせないミネラルであり、リンや窒素と並ぶ、不可欠な肥料の成分となっています。
カリウムの働き
カリウムは細胞内液に存在し、細胞外液に存在するナトリウムと濃度のバランスを取ることで、体液のpHや細胞の浸透圧を調整し、細胞内外の水分量を適切に保つ働きがあります。
細胞内と細胞外のカリウムとナトリウムの濃度差は「ナトリウム・カリウムポンプ」と呼ばれる細胞膜の機構によって常に一定に保たれています。
このポンプは、細胞内にナトリウムイオンが増えたらこれを細胞外に排出し、カリウムイオンを細胞内に取り込む働きをしています。
また、カリウムは神経の伝達や、心筋や筋肉の収縮、ホルモン分泌、細胞膜輸送、さらに酵素反応の調節やエネルギー代謝に関わっています。
カリウムの欠乏はまれだが…
カリウムは野菜をはじめ、多くの食品に含まれるため、欠乏することはまれです。
ただし、高血糖や糖尿病などによる尿量の増大、長期間に及ぶ利尿剤の使用、大量の発汗や下痢や嘔吐などにより体内量が不足することがあります。
その場合、筋力の低下や食欲不振、不整脈や低血圧などが起こりやすくなります。
コーヒーやアルコールなどの利尿作用の強いものを過剰に摂取すると、カリウムが排泄されやすくなるので注意が必要です。
日本人は積極的なカリウム摂取を
カリウムは、ほとんどが腎臓から尿中に排泄され、ナトリウムが尿細管から再吸収されるのを防ぎ、ナトリウムの尿中への排泄を促進します。
そのため、カリウムには、食塩の摂り過ぎによる高血圧に対する降圧作用があり、脳卒中の予防などにも効果があることが示唆されています。
ですので、食塩を摂り過ぎる傾向にある日本人は、カリウムを積極的に摂取することが重視されます。
ただし、腎機能障害のある人の場合は、軽症であっても高カリウム血症を引き起こす可能性があるので、カリウムの積極的摂取は避けるべきです。
カリウムを多く含む食品
カリウムはいも類、野菜、果物、海藻類など、様々な食品に含まれます。そのため、通常の食生活を送っていれば、カリウムが欠乏することはほとんどありません。
カリウムを多く含む食品の、可食部100グラムあたりの含有量(mg)は以下のとおりです。(1000mg=1g)
ほうれん草 690
切り三つ葉 640
にら 510
小松菜 500
たけのこ 520
枝豆 590
糸引き納豆 660
ゆで大豆 530
里芋 640
やまといも 590
さつまいも 480
じゃがいも 410
アボカド 720
メロン 340
バナナ 360
グレープフルーツ・ストレートジュース 180
刻みこんぶ 8200
ひじき(乾)6400
切干し大根(乾)3500
カリウムの1日あたりの目安量、目標量、耐容上限量
カリウムの1日あたりの目安量
18歳以上のカリウムの1日あたりの目安量(mg)は、以下のとおりです。
18歳以上の男性 2500mg
18歳以上の女性 2000mg
(妊婦は2000mg、授乳婦は2200mg)
カリウムの1日あたりの目標量
日本人は、塩分を通じてナトリウムを過剰摂取する傾向にあるため、カリウムは特に積極的に摂取することが重視されています。
そのため、必要最低限の量である目安量に加え、高血圧など生活習慣病予防の観点から、1日当たりの目標量が設定されています。
18歳以上のカリウムの1日あたりの目標量(mg)は、以下のとおりです。
18歳以上の男性 3000mg以上
18歳以上の女性 2600mg以上
(妊婦、授乳婦とも付加量なし)
なお、高血圧症の人は、男女ともに1日あたり3500mg以上のカリウム摂取が推奨されます。
詳しい表を以下に掲げます。
カリウムの耐容上限量、過剰症
カリウムは多くの食品に含まれていますが、腎機能が正常で、サプリメントなどを摂取しない限りは、過剰摂取のリスクはほぼありません。そのため、耐容上限量は特に設定されていません。
ただし、腎機能が低下している場合は、少量であっても高カリウム血症を引き起こすおそれがあるので、注意が必要です。
高カリウム血症は、胃腸障害、不整脈、徐脈、疲労感、精神障害など様々な症状が現れます。
カリウムの上手な摂り方
カリウムは野菜や果物をはじめとする、様々な食品に含まれています。
そのため、通常の食生活を送っていれば、カリウムが不足することはありません。
ただし、食材をゆでるなどの過程で損失が生じますので、根菜類やいも類や豆類のような、調理損失の少ないものを積極的に摂取するとよいです。
また、煮汁ごと食べるように心がけるとよいでしょう。その際は塩分摂り過ぎを防ぐため、煮汁を薄味にしておくことが重要です。
果物など、生のまま食べる食材は調理損失を気にしなくてよいので、効率よくカリウムを摂取できます。
他には、干し柿などのドライフルーツや、海苔などの乾物にも成分が凝縮されています。
カリウムの欠乏症・過剰症まとめ
カリウムが欠乏したり過剰になったりすると、以下のような症状を引き起こします。
カリウムの欠乏症
低カリウム血症
・めまい
・脱力感
・神経過敏
・食欲不振
・筋無力症
・筋肉痛
・関節炎
・低血圧
・不整脈など
カリウムの過剰症
高カリウム血症
・胃腸障害
・不整脈
・徐脈
・疲労感
・精神障害など
カリウムまとめ
カリウムについて、以下に簡潔にまとめます。
カリウムの主な働き
神経伝達、筋肉の収縮、体液のpH(酸とアルカリのバランス)の調整、体液の浸透圧の調整、体液量の調整、血圧上昇の抑制
カリウムを多く含む食品
いも類、野菜、果物をはじめ、様々な食品に含まれます。
野菜類(ほうれん草、小松菜など)
果物類(アボカド、メロンなど)
豆類(枝豆、納豆など)
海藻類(海苔、ひじきなど)
いも類(里芋、さつまいもなど)
カリウムの1日あたりの推奨量
単位はmg(1000mg=1g)
18歳以上の男性 3000mg以上
18歳以上の女性 2600mg以上
(妊婦、授乳婦とも付加量なし)
カリウムを食べ物から上手に摂る方法
カリウムは野菜や果物をはじめ、様々な食品に含まれる。そのため、通常の食生活を送っていれば、不足することはほぼない。
ゆでるなどの調理・加工の過程で失われやすいので、いも類・根菜類など損失の少ないもの、野菜や果物の生食、または煮汁ごと食べる調理法などで効率的に摂取できる。
また、ナトリウムの過剰摂取を防ぐためにも、薄味にするとよい。
↓↓各ビタミン・ミネラルの働き、多く含む食べ物や食べ方、欠乏症や過剰症などについて
主要(多量)ミネラル
カルシウムと骨、ビタミンD、エストロゲン
リンと骨、細胞膜、DNA、インスタント食品
マグネシウムと骨、心筋梗塞、生活習慣病
ナトリウムとむくみ、高血圧、カリウム、減塩対策
カリウムと高血圧、脳卒中、ナトリウム、腎臓
微量ミネラル
鉄分とヘム鉄、非ヘム鉄、不足の症状、女性の摂取量
亜鉛と味覚、成長、生殖機能、インスリン
銅と貧血、白髪、抜け毛、鉄や亜鉛との関係
マンガンと骨の成長、糖脂質代謝、性機能
ヨウ素と甲状腺ホルモン、乳幼児の発達
セレンと抗酸化作用、水銀やヒ素やカドミウムの毒性
脂溶性ビタミン
ビタミンAとβカロテン、抗酸化作用
ビタミンDと骨とカルシウム
ビタミンEと過酸化脂質と抗酸化作用
ビタミンKと骨と血液凝固と新生児
水溶性ビタミン
ビタミンB1とアルコール
ビタミンB2と脂質の代謝
ナイアシンとアルコール、トリプトファン
ビタミンB6とアミノ酸、つわり、月経前症候群
葉酸と妊娠、DNA、動脈硬化
ビタミンB12と葉酸の関係、欠乏症、消化吸収の特徴
パントテン酸と糖質・脂質の代謝、神経伝達、善玉コレステロール
ビオチンと卵白、アトピー、血糖値、胎児