クロムはインスリンの作用を増強し、正常な糖代謝や脂質代謝を保ち、糖尿病や脂質異常症をはじめとする生活習慣病を防ぐ重要な働きがあります。
また、成長にも欠かせないミネラルです。
そんなクロムの効果や効能、多く含む食べ物、欠乏症や過剰症などについて簡単にまとめてみました。
クロムとは
クロムのうちミネラルとしての働きを持つのは、3価のクロムです。
他に、めっき等に使われる6価クロムがありますが、毒性が強く、皮膚炎や腫瘍を引き起こし、発がん性もあり、栄養素としての働きはありません。
また、4価クロムというものもありますが、こちらは発がん性が指摘されています。
以後、単にクロムと言った場合は、3価クロムを指します。
クロムの成人における体内量は約6mg程度ですが、肝臓、腎臓、脾臓、血液、骨など、全身に幅広く存在します。
食品中のクロムは小腸から吸収され、血液中のトランスフェリンという糖たんぱく質と結合し、全身に運ばれます。
クロムの吸収率はとても低く、わずか1%程度と推定されており、摂取したクロムのほとんど全てが尿中に排泄されます。
さらに、ほうれん草など一部の野菜に多く含まれるシュウ酸や、玄米など精白していない穀類に多く含まれるフィチン酸などにより、吸収が阻害されます。
また、ビタミンCによって吸収がよくなります。
ビタミンCの働きや効果、食べ物、摂取量、不足や大量摂取の影響は?
クロムの働き、インスリン、欠乏症
クロムは、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、グリシンからなるオリゴペプチドと結合して、クロモデュリンと呼ばれる低分子量のクロム結合物質を作ります。
クロモデュリンの主な働きは、インスリンの作用を増強することです。
インスリンは、食後に血中に増えたブドウ糖(血糖)と結合し、これを肝臓や筋肉に送り届ける働きがあります。
細胞膜の表面にはインスリン受容体という、インスリンから糖を受け取る役目を持つたんぱく質があります。クロモデュリンには、このインスリン受容体の活性を維持する働きがあります。
そのため、クロムが欠乏すると、インスリンの作用が弱まり、血中インスリン濃度が正常であっても、耐糖能に異常をきたし、血糖値や血中コレステロール濃度などが正常に保たれなくなります。
クロムが欠乏した結果、糖代謝のみならずコレステロール代謝にも異常をきたし、肥満、高血圧、動脈硬化、糖尿病、高脂血症、心臓病などの生活習慣病にかかりやすくなります。
また、成長障害や免疫能低下、体重低下なども引き起こします。
クロムの1日あたりの目安量、耐容上限量
クロムの1日あたりの目安量
18歳以上のクロムの1日あたりの目安量(μg)は、以下のとおりです。(1000μg=1mg、1000mg=1g)
18歳以上の男女 10μg(妊婦、授乳婦とも付加量なし)
耐容上限量は設定されていません。
詳しい表を以下に掲げます。
クロムと過剰症、耐容上限量
クロムの食品からの吸収率は非常に低いため(約1%)、通常の食生活を送っていれば、過剰摂取のおそれはありません。
そのため、特に耐容上限量は定められていません。
ただし、サプリメントの過剰摂取による肝障害や横紋筋融解などの可能性が否定できないこと等から、サプリメントによる大量摂取は控えるべきとされています。
クロムの過剰症としては、他に胃腸や腎臓への障害のリスクが指摘されています。
また、6価クロムの場合は皮膚炎や肺がんを引き起こします。
クロムを多く含む食品
クロムは微量ながら様々な食品に幅広く含まれています。
クロムを多く含む食品の、可食部100グラムあたりの含有量(μg)は以下のとおりです。(1000μg=1mg、1000mg=1g)
アマランサス 7
蕎麦(生)3
コーンフレーク 3
青海苔 39
きざみ昆布(素干し)33
ひじき(乾)26
アーモンド(フライ味付け)9
ピーナッツ(乾)4
アサリ 4
じゃがいも 5
黒砂糖 13
クロムの上手な摂り方
クロムは微量ながら様々な食品に幅広く含まれるミネラルです。
吸収率が悪いのですが(約1%)、必要量も少ないため、通常の食事で不足することはありません。
ただ、ほうれん草など一部の野菜に多く含まれるシュウ酸や、精白していない穀類に含まれるフィチン酸により吸収が阻害されるので、これらの食物を摂り過ぎないようにしましょう。
シュウ酸に関しては、調理の際のアク取りをしっかりすることで、取り除くことができます。
また、ビタミンCと摂取すると吸収効率が上がるので、ビタミンCを多く含むアブラナ科の青菜類、フルーツやじゃがいも・さつまいもなどと一緒に摂るとよいでしょう。
ビタミンCの働きや効果、食べ物、摂取量、不足や大量摂取の影響は?
クロムの欠乏症・過剰症まとめ
クロムが欠乏したり過剰になったりすると、以下のような症状を引き起こします。
クロムの欠乏症
耐糖能異常
コレステロール代謝の異常
肥満
高血圧
動脈硬化
糖尿病
高脂血症
心臓病
成長障害
免疫能低下
体重低下
末梢神経障害
角膜障害
クロムの過剰症
嘔吐
下痢
腹痛
腎臓障害
肝障害
造血障害
中枢神経障害
(6価クロムの場合)
皮膚炎
腫瘍
肺がん
クロムまとめ
クロムについて、以下に簡潔にまとめます。
クロムの主な働き
インスリン作用の増強、正常な糖代謝とコレステロール代謝
クロムを多く含む食品
微量ながら、いろいろな食品に幅広く含まれる。
穀類(アマランサス、蕎麦など)
藻類(青海苔、ひじきなど)
ナッツ類(アーモンドなど)
クロムの1日あたりの目安量
18歳以上のクロムの1日あたりの目安量(μg)(1000μg=1mg、1000mg=1g)
18歳以上の男女 10μg(妊婦、授乳婦とも付加量なし)
耐容上限量は設定されていない
クロムを食べ物から上手に摂る方法
クロムは様々な食品に含まれている。
ほとんど吸収されずに尿中に排泄されるが、必要量がわずかなので、通常の食事で欠乏することはない。
また、吸収率の低さ(約1%)から、過剰摂取のおそれもない。
フィチン酸(精白していない穀類)、シュウ酸(ほうれん草など)により吸収が阻害される。ほうれん草などはアクをしっかり取り除くとよい。
↓↓各ビタミン・ミネラルの働き、多く含む食べ物や食べ方、欠乏症や過剰症などについて
主要(多量)ミネラル
カルシウムと骨、ビタミンD、エストロゲン
リンと骨、細胞膜、DNA、インスタント食品
マグネシウムと骨、心筋梗塞、生活習慣病
ナトリウムとむくみ、高血圧、カリウム、減塩対策
カリウムと高血圧、脳卒中、ナトリウム、腎臓
微量ミネラル
鉄分とヘム鉄、非ヘム鉄、不足の症状、女性の摂取量
亜鉛と味覚、成長、生殖機能、インスリン
銅と貧血、白髪、抜け毛、鉄や亜鉛との関係
マンガンと骨の成長、糖脂質代謝、性機能
ヨウ素と甲状腺ホルモン、乳幼児の発達
セレンと抗酸化作用、水銀やヒ素やカドミウムの毒性
クロムとインスリン、糖質・脂質代謝、発がん性
脂溶性ビタミン
ビタミンAとβカロテン、抗酸化作用
ビタミンDと骨とカルシウム
ビタミンEと過酸化脂質と抗酸化作用
ビタミンKと骨と血液凝固と新生児
水溶性ビタミン
ビタミンB1とアルコール
ビタミンB2と脂質の代謝
ナイアシンとアルコール、トリプトファン
ビタミンB6とアミノ酸、つわり、月経前症候群
葉酸と妊娠、DNA、動脈硬化
ビタミンB12と葉酸の関係、欠乏症、消化吸収の特徴
パントテン酸と糖質・脂質の代謝、神経伝達、善玉コレステロール
ビオチンと卵白、アトピー、血糖値、胎児