イオウ(硫黄)は含硫アミノ酸の成分として、ケラチンやコラーゲンの材料として毛髪や爪や皮膚、軟骨や骨など身体をつくるもととして欠かせないミネラルです。

また、ビタミンB1やビオチンやパントテン酸、コエンザイムAなどのビタミン・補酵素の構成成分として身体の機能を正常に保つ働きを持っています。

そんなイオウの働きや多く含む食べ物、欠乏症や過剰症などについて簡単にまとめてみました。

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イオウ(硫黄)とは

たんぱく質は消化されてアミノ酸となりますが、そのうちイオウを含むものを含硫アミノ酸といいます。

イオウは、主にこの含硫アミノ酸として、食品中のたんぱく質から摂取されます。

含硫アミノ酸には、メチオニン、シスチン、システインの3種類があります。

このうちメチオニンは必須アミノ酸で、コレステロール値を下げ、活性酸素を除去する働きを持つほか、カルニチンやタウリンの合成や、リン脂質の生成に関わっています。

シスチンやシステインはメラニン色素の生成を抑制し、シミ・ソバカスを改善する効果が期待されています。

他に、厳密にはアミノ酸ではありませんが、タウリンなども栄養学においては含硫アミノ酸として扱われることがあります。

イオウの働き

含硫アミノ酸として吸収されたイオウの約半分は筋肉の中に存在します。

含硫アミノ酸は皮膚や毛髪や爪を作るたんぱく質であるケラチン、軟骨や腱や骨の構成成分となるコンドロイチン硫酸に含まれています。

コンドロイチン硫酸はコラーゲンの合成などに欠かせない物質です。

また、ビタミンB1やビオチン、パントテン酸やコエンザイムA(CoA)などのビタミン類や補酵素の構成成分として、身体の機能を整える働きがあります。

ビタミンB1の働きについて
ビオチンの働きについて
パントテン酸の働きについて

さらに、血糖値を調整するインスリン、肝機能を活性化し肝細胞再生を促進するタウリン、強力な抗酸化作用や解毒作用を持つグルタチオンなどにも含まれます。

他に、血液が固まるのを防ぐヘパリンや、動脈血管壁のマスト細胞などの構成成分にもなっています。

このように、イオウは身体の様々な構成成分や、様々な機能を正常に維持するのに欠かせないミネラルです。

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イオウの欠乏症と過剰症

イオウは含硫アミノ酸として食品中のたんぱく質に含まれています。

そのため、たんぱく質をしっかり摂取していれば、欠乏の心配はありません。

ただし、厳格な菜食主義者などの場合は不足するおそれがあります。植物性食品ではネギやニラ、大豆などに多く含まれますので、これらの食品から補うとよいでしょう。

含硫アミノ酸の摂取が不足すると、これを構成成分とする皮膚や爪、髪の毛などの異常が見られるようになります。

具体的には、髪につやがなくなり、爪がぼろぼろになり、皮膚が荒れます。また成長も遅くなります。

また、イオウは骨や軟骨、腱の構成成分でもあるので、不足すると発育不良や関節炎を引き起こします。

なお、イオウの過剰症は通常は起こりません。

イオウの食事摂取基準

イオウの食事摂取基準は、たんぱく質中に含まれる含硫アミノ酸量として評価されています。

また、特に含硫アミノ酸を意識しなくとも、たんぱく質を普段の食事でしっかり摂っていれば問題ありません。

そのため、イオウとしての摂取基準は設けられていません。

日本人の食事摂取基準では、身体の成長や維持に必要なたんぱく質の量(約50~60g/日)から推定される、18歳以上の男女の含硫アミノ酸の1日の平均必要量は、体重1㎏あたり15mgです。

体重60kgの人なら、1日あたり900mgの含硫アミノ酸を摂ればよいことになります。

イオウを多く含む食品

イオウは主に含硫アミノ酸として食品のたんぱく質中に含まれます。

レバーや肉類、魚介類、卵や牛乳など動物性たんぱく質のほか、大豆のたんぱく質にも豊富に含まれます。

特に多く含まれるのは、カツオ、サンマ、ブリ、サケ、イワシなどの魚類です。

たんぱく質以外では、ネギやニラやニンニクなどからも、臭いのもとである硫化アリルなどの含硫化合物として摂取できます。

↓↓各ビタミン・ミネラルの働き、多く含む食べ物や食べ方、欠乏症や過剰症などについて

こちらでビタミン・ミネラルについて、簡単にまとめています。

主要(多量)ミネラル
カルシウムと骨、ビタミンD、エストロゲン
リンと骨、細胞膜、DNA、インスタント食品
マグネシウムと骨、心筋梗塞、生活習慣病
ナトリウムとむくみ、高血圧、カリウム、減塩対策
カリウムと高血圧、脳卒中、ナトリウム、腎臓
イオウとケラチン、コラーゲン、インスリン、タウリン

微量ミネラル
鉄分とヘム鉄、非ヘム鉄、不足の症状、女性の摂取量
亜鉛と味覚、成長、生殖機能、インスリン
銅と貧血、白髪、抜け毛、鉄や亜鉛との関係
マンガンと骨の成長、糖脂質代謝、性機能
ヨウ素と甲状腺ホルモン、乳幼児の発達
セレンと抗酸化作用、水銀やヒ素やカドミウムの毒性
クロムとインスリン、糖質・脂質代謝、発がん性
モリブデンとプリン体、尿酸、アルコール、貧血
コバルトとビタミンB12、貧血、葉酸

脂溶性ビタミン
ビタミンAとβカロテン、抗酸化作用
ビタミンDと骨とカルシウム
ビタミンEと過酸化脂質と抗酸化作用
ビタミンKと骨と血液凝固と新生児

水溶性ビタミン
ビタミンB1とアルコール
ビタミンB2と脂質の代謝
ナイアシンとアルコール、トリプトファン
ビタミンB6とアミノ酸、つわり、月経前症候群
葉酸と妊娠、DNA、動脈硬化
ビタミンB12と葉酸の関係、欠乏症、消化吸収の特徴
パントテン酸と糖質・脂質の代謝、神経伝達、善玉コレステロール
ビオチンと卵白、アトピー、血糖値、胎児