一言で糖質と言っても、単糖類、二糖類、オリゴ糖、多糖類など様々な種類に分けられます。
単糖類は糖質の最小単位で、栄養分としてはブドウ糖、果糖、ガラクトースなどが重要です。また、RNAやDNAの構成成分であるリボースやデオキシリボースも単糖類です。
他に、単糖類からつくられる誘導体として、グルコサミンやコンドロイチン硫酸などのアミノ糖や、ウロン酸、キシリトールやエリトリトールなどの糖アルコールがあります。
少糖類(オリゴ糖)は単糖類が2~10分子ほど結合したもので、2分子結合したものを特に二糖類と呼びます。二糖類にはショ糖(スクロース)、麦芽糖(マルトース)、乳糖(ラクトース)などがあります。
多糖類は単糖類が多数結合したもので、アミロース・アミロペクチン(でんぷん)、グリコーゲンなどがあります。
これら単糖類、二糖類、オリゴ糖、多糖類の主な種類やそれぞれの働きについて、簡単にまとめてみました。
単糖類とは
単糖類は、それ以上細かくすると糖質ではなくなる、糖質の最小単位です。
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天然の単糖類には1つの分子あたり3~7個があり、重要なものには炭素数6の六炭糖であるグルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトース、マンノースと、炭素数5の五炭糖であるリボースとデオキシリボースなどがあります。
グルコース(ブドウ糖)
ブドウ糖(グルコース)は穀物や果物に多く、人が最も多く摂取する単糖類です。
マルトース(麦芽糖)、スクロース(ショ糖、砂糖の主成分)、ラクトース(乳糖)、トレハロース、アミロース・アミロペクチン(でんぷん)など、他の多くの糖質の構成単位となっています。
グルコース(ブドウ糖)は血糖として血液中に約0.1%含まれており、全身の細胞に取り込まれてエネルギー源として利用されます。
フルクトース(果糖)
フルクトース(果糖)は果物や果汁、はちみつに多く含まれており、低温時にはスクロース(ショ糖)の1.73倍もの甘さがあると言われています。
そのため、果糖は果糖ぶどう糖液糖として、清涼飲料水やアイスなどの冷菓の甘味料として多用されています。
ただし、高温時には甘味度が下がり、砂糖の6割程度になります。
果糖は小腸から吸収された後、代謝されエネルギーとして利用されますが、多量に摂取すると中性脂肪の蓄積を招き、コレステロールの合成を促進します。
なお、キクイモやゴボウなどキク科の根塊に多く含まれるイヌリンという食物繊維は、果糖が多数結合してできた多糖類です。
ガラクトース
ガラクトースは、多くはブドウ糖と結合したラクトース(乳糖)や糖脂質・糖タンパク質に存在しています。
小腸から吸収されたガラクトースは、ブドウ糖に変えられた上でエネルギー代謝に利用されるほか、赤血球表面や消化管粘液などの成分となります。
里芋のぬめり成分であるガラクタンは、ガラクトースが多数結合した多糖類です。
マンノース
こんにゃくなどに多く含まれるマンナンという多糖類は、このマンノースが多数結合したものです。
マンノースはグルコースなどと違い、人体においてはエネルギー代謝に利用されることはあまりありません。
ただし、糖タンパク質の構成成分として、体内で様々な重要な働きを担っています。
リボース、デオキシリボース
リボースはRNA(リボ核酸)やヌクレオチド補酵素に含まれ、デオキシリボースはDNA(デオキシリボ核酸)の構成成分です。これらはグルコースからも合成されます。
単糖類の誘導体
単糖類の誘導体(元の化合物の構造や性質を大幅に変えない程度の改変がなされたもの)としてアミノ糖、ウロン酸、糖アルコールなどがあります。
アミノ糖
アミノ糖とは、アミノ基(-NH2)が結合した六炭糖です。グルコサミン、ガラクトサミン、マンノサミンなどがあります。
グルコサミンは糖タンパク質、糖脂質、ヒアルロン酸に含まれ、ガラクトサミンは糖タンパク質、糖脂質、コンドロイチン硫酸に含まれます。
ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸は保湿成分として、また軟骨やじん帯などの弾力性・拡張性を持つ結合組織の成分として重要です。
ウロン酸
単糖が酸化してヒドロキシメチル基(-CH2OH)がカルボキシル基(COOH)に置き換わったものです。
主なウロン酸として、グルコースから生成されるグルクロン酸と、ガラクトースから生成されるガラクツロン酸があります。
グルクロン酸は非常に水に溶けやすい性質があり、体内の毒物と結合して排出したり、ホルモンと結合して輸送しやすくする働きがあります。
ガラクツロン酸が多数結合したポリガラクツロン酸はペクチンの主成分として知られています。
糖アルコール
糖アルコールは消化吸収されにくいものが多く、カロリーになりにくい一方で甘みがあり、さらに虫歯にもなりにくいため、低カロリーの甘味料として利用されます。
天然に産出される糖アルコールとしては、グリセリンやエリスリトール(エリトリトール)、キシリトール、ガラクチトールやマンニトールなどがあります。
少糖類とは
少糖類(オリゴ糖)とは、単糖が2~10分子結合したものをいいます。2つ、3つ…結合したものを二糖類、三糖類…と呼びます。
なお、オリゴ糖と少糖類という言葉は、ともに英語のoligosaccharideの訳語で、本来同じ意味です。
oligoは「少ない、少数の」という意味で、saccharideは「糖」という意味です。日本語でオリゴ糖と言った場合、分子が3つ以上結合したものを特にそう呼んでいます。
二糖類
二糖類は、少糖類の中でも単糖が2分子結合したものをいいます。栄養として特に重要なものに、スクロース(ショ糖)、マルトース(麦芽糖)、ラクトース(乳糖)があります。
スクロース(ショ糖)
スクロース(ショ糖)は、グルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)が結合した二糖類です。
スクロースは砂糖の主成分で、さとうきびや砂糖大根などから採取されます。
スクロースはその分子構造から、還元性を持たない(酸化されにくい)という特徴があります(ブドウ糖、果糖、ガラクトース、麦芽糖、乳糖などはすべて還元性を持つ)。
マルトース(麦芽糖)
マルトース(麦芽糖)はグルコースが2分子結合した二糖類です。
でんぷんやグリコーゲンが、消化酵素のアミラーゼによって分解され、マルトースやイソマルトースになります。
マルトースは麦芽やはちみつに多く含まれています。
ラクトース(乳糖)
ラクトース(乳糖)はグルコースとガラクトースが結合した二糖類です。
哺乳類の乳汁に多く含まれており、乳児の主要なエネルギー源になります。
乳児期までは小腸にラクターゼ(乳糖の消化酵素)が多く分泌されるので、ラクトースを容易に消化し、栄養とすることができます。
一般にヒトを含めた哺乳類は、乳児期を過ぎるとラクターゼの分泌量が激減します。成人では、乳糖を栄養として消化吸収できず、乳糖不耐症になる場合があります。
オリゴ糖
少糖類のうち、単糖が3分子以上が結合したものは消化酵素によって消化されないものが多く、難消化性オリゴ糖と呼ばれます。
難消化性オリゴ糖には、
・消化されないのでエネルギー源になりにくい
・甘みがあるので砂糖の代わりになる
・虫歯になりにくい
・ビフィズス菌や乳酸菌などの腸内細菌を増やす整腸作用がある
という特徴があります。
その他のオリゴ糖にはマルトトリオースやマルトオリゴ糖などがあります。
これらのオリゴ糖はリンゴやバナナなどの果物類、キャベツなどの野菜類、はちみつ、牛乳などに多く含まれています。
多糖類とは
多糖類とは、単糖やその誘導体が多数結合したものをいいます。
でんぷん
でんぷんはグルコース(ブドウ糖)が多数結合した多糖類で、水には溶けず、甘みはありません。
穀類やイモ類、豆類などに豊富で、エネルギー源として最も多く摂取されています。
でんぷんはグルコースの結合のしかたにより、さらにアミロースとアミロペクチンに分けられます。
アミロース
アミロースは1000個程度のグルコースが直鎖状に結合したものです。通常のでんぷんに20~30%程度含まれています。
上のα-1,4結合は実際にはまっすぐではなく少し曲がっているので、この直鎖は全体としては螺旋状になっています。
アミロペクチン
アミロペクチンはアミロースよりも分子量が多く、1万~10万個ほどのグルコースが枝分かれして結合したものです。通常のでんぷんには70~80%程度含まれています。
アミロペクチンはグルコース約25個ごとに枝分かれしており、全体としては次の図のようになっています。
もち性とうるち性
アミロースは熱水に溶けますが、アミロペクチンは溶けません。
アミロースはその直鎖状の形から粘り気が弱く、アミロペクチンはその分枝状の形から粘り気が強い(分子同士が絡まりやすいため)です。
穀類のでんぷんにはうるち性ともち性のものがあり、うるち性はアミロースが20~30%、アミロペクチンが70~80%ほどです。
一方、もち性のものはアミロペクチンがほぼ100%で、非常に粘り気の強い食感になります。
でんぷんのアルファ化(糊化)とベータ化(老化)
精白米など生のでんぷんは、アミロペクチンがアミロースを取り囲んで密接に結合した「ミセル」と呼ばれる状態になっており、水に溶けにくい構造をしています。
これに水を加えて加熱すると、ミセル結合が緩んで、構造のすき間に水分子が入り込めるようになります。その結果、でんぷんは水を吸って膨潤し、粘り気が出てきます。
さらに加熱を続けると、やがて半透明の糊状になります。これを糊化(α化)といいます。糊化すると消化酵素の作用も受けやすい状態になっており、消化がよく、食味もよくなります。
糊化したでんぷんを長時間放置しておくと、でんぷん分子内に入り込んでいた水分子が抜け出し、でんぷん分子は再びミセル構造をつくり始め、かたくなり、消化されにくくなります。これを老化(β化)といいます。
グリコーゲン
グリコーゲンは、でんぷんと同じく、グルコースが多数結合した多糖類ですが、アミロペクチンよりもさらに分枝が多く、全体として球状をしています。
食事から吸収されたグルコースが肝臓でグリコーゲンに合成され、肝臓や筋肉にエネルギー源として貯蔵されます。必要に応じてグリコーゲンからグルコース分子が切り離され、利用されます。
デキストリン
デキストリンはグルコースが多数結合した多糖類です。でんぷんやグリコーゲンがアミラーゼで分解されることで生成されます。デキストリンはさらにアミラーゼによって最終的にマルトースに分解されます。
デキストリンの中でも、とうもろこしのでんぷんを焙焼したものをアミラーゼで分解した後、難消化部分を分離精製したものを難消化性デキストリンといい、水溶性食物繊維として利用されています。
まとめ
糖類には単糖類、少糖類、多糖類がある。
単糖類は糖の最小の単位で、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、ガラクトース、リボース、デオキシリボースなどがある。
グルコース、フルクトース、ガラクトースは主にエネルギー源として、リボースとデオキシリボースは核酸の構成成分として働く。
また、単糖類の誘導体としてアミノ糖(グルコサミン、ガラクトサミン)やウロン酸(グルクロン酸、ガラクツロン酸など)、糖アルコール(エリスリトール、キシリトールなど)がある。
少糖類は単糖が2~10分子結合したもので、2分子のものを二糖類という。二糖類にはショ糖(スクロース)、麦芽糖(マルトース)、乳糖(ラクトース)がある。
ラクトースは消化酵素ラクターゼにより消化吸収されるが、乳児期を過ぎるとこのラクターゼの分泌量が激減するため、成人では乳糖不耐症になる場合がある。
3分子以上の少糖類はオリゴ糖と呼ばれ、マルトトリオースやマルトオリゴ糖などがある。
多糖類は単糖類が多数結合したもので、アミロース・アミロペクチン(でんぷん)、グリコーゲン、デキストリンなどがある。
アミロースは直鎖状、アミロペクチンは分枝状である。
通常のでんぷんにはアミロースとアミロペクチンが2:8から3:7の割合で含まれるが(うるち性)、アミロペクチン100%のものは非常に粘り気が強くなる(もち性)。
グリコーゲンはアミロペクチンよりも分枝が多い。肝臓や筋肉に蓄積され、必要に応じてグルコース分子を切り離してエネルギー源として利用される。
デキストリンはでんぷんが消化酵素アミラーゼによって最終的にマルトース(麦芽糖)にまで分解される中間生成物である。マルトースにまで分解されずに残った分子は難消化性デキストリンとよばれ、食物繊維として利用されている。
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