ダイエットひいては健康的な生活に欠かせない運動。
具体的にどんな運動をどのくらいやれば健康を維持増進できるのでしょうか?
そんな疑問に答えてくれる指標が、厚生労働省によるメッツ(METs)とエクササイズ(Ex)です。
このメッツとエクササイズという考え方をどのようにダイエットに応用するのか、具体例や注意点とともにご紹介したいと思います。
ダイエットに運動は不可欠。運動の指標・メッツとエクササイズとは
効果的なダイエットには運動が欠かせません。
と言うのも、ダイエットの基本は
摂取カロリー<消費カロリー
だからです。
世の中にいろんなダイエット法が出回っていますが、あらゆるダイエット法はすべてこの不等号を満たしています。(満たさなければ絶対に痩せません)
私たちの1日の消費カロリーの大半は基礎代謝によるものですが、基礎代謝だけで摂取カロリーを上回ることは難しいです。
ですので、運動によって消費カロリーを増やさなければなりません。
そして、効果的なダイエットのためには、日々の運動でどれくらいカロリーを消費したのかを、ある程度正確に把握しておく必要があります。
逆に、毎日の摂取カロリーと消費カロリーをきちんと把握しておくことで、どのくらいのペースで体重(体脂肪)を落としていけるのかが、かなり正確に分かるようになります。
そのための便利な概念が、厚生労働省によるメッツ(METs)と呼ばれる指標(単位)です。
メッツ(METs)とは
メッツ(METs)とは、Metabolic Equivalentsの略で、簡単に言うと、ある運動がどのくらいカロリーを消費するのかを表す指標(単位)です。
まず、安静時のメッツ=1と定義します。
1時間安静にしていた場合に消費するカロリーは
体重×1.05(kcal)
で与えられます。体重65キロの男性が1時間安静にしていた場合、
65×1.05=68.25kcal
を消費することになります。
ですので、この場合、1メッツとは「1時間で68.25kcalを消費する運動の強度」と言う意味になります。
(女性も同様です。体重50キロの女性なら、1時間で50×1.05=52.5kcalの消費です)
基礎代謝などがあるため、じっとしていてもカロリーを消費するのですね。
同様にして、2メッツの運動を1時間したとすると、68.25×2=136.5kcalを消費することになります。
このように、あらゆる動作について、メッツの値を見れば、1時間あたりどのくらいカロリーを消費するのかが分かります。
さまざまな動作におけるメッツの値は、国立健康・栄養研究所が公表していますので、参考にするとよいと思います。
参考のために、この中からいくつか代表的な動作・運動のメッツを挙げておきます:
1.0 横になって静かにテレビを観る
1.3 立位で静かにする:列に並ぶ
1.5 文書のコピーをとる:立位
1.5 入浴:座位
1.8 アイロンがけ
2.3 ピアノの演奏:座位
2.3 ストレッチ:ゆったり
2.5 植物への水やり
2.5 ヨガ:ハタ
3.0 ボウリング
3.0 ピラティス:全般
3.5 散歩
3.5 釣り:全般
3.8 掃除:掃き掃除、ゆっくり、ほどほどの労力
3.8 ガーデニング:全般、ほどほどの労力
4.0 屋根の雪下ろし
4.0 自転車に乗る:16.1キロ毎時未満、レジャー、通勤、娯楽
4.0 階段を上る:ゆっくり
4.5 水中歩行:ほどほどの労力、ほどほどの速さ
4.8 部屋の片づけ
4.8 ゴルフ:全般
5.0 テニス:ボールを打つ、試合以外、ほどほどの労力
5.3 アクアビクス:水中での健康体操、水中運動
6.0 大工仕事:のこぎりで硬材を切る
6.0 ランニング:6.4km/時、107.3m/分
6.5 バスケットボール:全般
7.0 ジョギング:全般
7.0 スキー:全般
7.3 テニス:全般
8.3 水泳:クロール、ふつうの速さ、45.7m/分未満、きつい労力
10.0 水泳:クロール、速い、68.6m/分未満、きつい労力
12.3 なわとび:全般
13.3 ランニング:マラソン
15.0 ランニング:階段を上がる
こうやって見ると、日々の様々な動作で、知らず知らずのうちに結構なカロリーを消費していることが分かります。
エクササイズ(Ex)とは
さて、エクササイズ(Ex)という単位もあります。
エクササイズ=メッツ×時間
で定義されています。
上の体重65キロの男性の例ですと、3メッツの運動を2時間行うと、
3メッツ×2時間=6エクササイズ
となり、消費カロリーは
68.25×6=409.5kcal
になります。
一般的に、
体重×1.05×エクササイズ=消費カロリー(kcal)
という式が成り立つことが分かります。
メッツはあくまでも運動の強度(どれくらい激しいか)を表す数値で、これに運動した時間を掛けることで、総運動量が計算できます。
その総運動量がエクササイズ(Ex)というわけですね。
メッツとエクササイズの具体的活用法
さて、ここまでいろんな単位や数字が出てきて混乱しそうですね。
もし上の公式が使いづらいのであれば、以下のような簡略化したもので代用するという手もあります。
消費カロリー=体重×メッツ×時間
1.05を掛けるのを省いているため、消費カロリーが少なめに出てしまいますが、ダイエットのためには、むしろそちらの方がいいかもしれません。
例えば体重65キロの人が散歩を30分(0.5時間)したとします。上のメッツ表によると、散歩のメッツ=3.5なので、
65×3.5×0.5=113.75kcal
となります。
1.05を掛けた正確な値は113.75×1.05≒119.44kcalなので、ほとんど無視できる程度の誤差です。
ちなみに、この3.5×0.5の部分がエクササイズ値に当たります。
ですので、エクササイズ(Ex)という単位をわざわざ意識する必要はないと個人的には思います。
単純にこの公式「体重×メッツ×時間」を覚えて、あとはメッツ表を見て計算していけば十分でしょう。
メッツ表の注意点
さて、上のメッツ表には注意すべき点が1つあります。
それは、「運動による純粋な消費カロリーではない」ということです。
どういうことでしょうか?
実は、この計算で求まるカロリーは、活動時間中に消費したカロリ―全体、つまり
「安静時の消費カロリー」+「活動により上乗せされた消費カロリー」
を表しているのです。
安静時の消費カロリーには基礎代謝が含まれているので、このままでは、1日の消費カロリーを計算するときに、基礎代謝を二重に計算してしまうことになってしまいます。
ですので、上の例で活動によって加算された消費カロリーは、この113.75(3.5メッツを30分)から安静時の消費カロリーである65×0.5=32.5(1メッツを30分)を引いた81.25になります。
ですので、活動により純粋に増加した消費カロリーの計算式は
体重×(メッツ-1)×時間
となります。
もし1.05を掛けて厳密にやりたいのであれば、
体重×1.05×(メッツ-1)×時間
となります。
まとめ
ダイエットにメッツ計算を応用する流れをまとめると、以下のようになります。
- ダイエットとは「摂取カロリー<消費カロリー」を満たすこと
- 消費カロリーは運動で増やす
- 消費カロリーの計算はメッツ表を活用
- 消費カロリーは「体重×1.05×メッツ×運動した時間」
- ただし「真の」消費カロリーは
「体重×1.05×(メッツー1)×運動した時間」 - 簡略化して
「体重×(メッツー1)×運動した時間」でもOK
以上の流れをさらにまとめると、結局、
1.メッツ表にアクセスし、
2.「体重×(メッツー1)×運動した時間」を計算する
これだけになります。
散歩でも家事でも、よく行う運動のメッツ値(散歩=3.5など)と、この公式を覚えておけば、いつでも暗算でおおよその消費カロリーが把握できますので、ぜひ覚えておきたいですね。