ダイエットや美容や健康のことを考えた際、食事において一番に気になるのはカロリーですが、ビタミンの役割も無視できません。
ビタミンAは抗酸化作用が注目されがちですが、他にどのような機能や特徴があるのか、簡単にまとめてみました。
ビタミンAとは
ビタミンAは、主に目の機能、皮膚や粘膜の健康を維持するのに必要なビタミンです。
動物性食品では、特にレバー(肝臓)や肝油に多く含まれています。
植物性食品では、主に緑黄色野菜にβカロテンとして含まれます。
βカロテンはビタミンAそのものではありませんが、体内で必要に応じてビタミンAに変化します。このような物質をプロビタミンAといいます。
βカロテン以外にも、αカロテン、γカロテン、クリプトキサンチンなどのカロテノイドがプロビタミンAとして働きます。
(ただし、緑黄色野菜に含まれるカロテノイドは、ほとんどがβカロテンです。例外的にニンジンはαカロテンを豊富に含みます)
ビタミンAは脂溶性なので、水溶性ビタミンとは異なり、摂れば摂るほどどんどん体内(主に肝臓)に蓄積していくので、摂り過ぎると「過剰症」を引き起こします。
なお、ビタミンAとして働く物質は50種類ほどが知られていますが、代表的な物質はレチノールと呼ばれるものです。
そのため、ビタミンAの摂取量としては、このレチノールに換算した値を用います(レチノール活性当量、単位μgRAE)。
参考までに、以下がβカロテンとレチノールの構造式です。
ビタミンAの働き
ビタミンAは、皮膚や粘膜などの細胞の形成や、細胞の正常な分化に関わります。皮膚や粘膜の乾燥を防ぎ、子供の成長にも欠かせないものです。
βカロテンには、活性酸素を除去する抗酸化作用という独自の働きがあり、脳血管疾患や心筋梗塞、がんなどの予防に効果があるとされています。
また、ビタミンAはレチナールという物質のもとになります。レチナールは、目の網膜が光を感じる際に働くロドプシンというたんぱく質に含まれています。そのため、ビタミンAが不足すると、ロドプシンが十分に合成されず、暗い所で物がよく見えなくなります(夜盲症)。
ビタミンAを多く含む食品
ビタミンAは主に動物のレバー(肝臓)や肝油に多く含まれています。植物では、緑黄色野菜にβカロテンとして多く含まれています。
可食部100グラムあたりのレチノール活性当量(μgRAE)で換算すると、以下のとおりです。
鶏レバー 14000μg
豚レバー 13000μg
牛レバー 1100μg
うなぎ蒲焼 1500μg
銀だら 1500μg
ほうれん草 350μg
モロヘイヤ 840μg
かぼちゃ 330μg
にんじん 720μg
焼き海苔 2300μg
味付け海苔 2700μg
鶏・豚のレバーがダントツで多いことが分かりますね。
海苔も多いですね。実際にはそんなに量を食べられないのですが、レバーや野菜類と合わせると十分なビタミンAを摂ることができます。
βカロテンとレチノールの関係
βカロテンは、緑黄色野菜に多く含まれます。逆に、正確に言うと、カロテンを多く含む野菜を緑黄色野菜と呼んでいるのです。
「緑黄色野菜」というのは、
原則として可食部100グラムあたり600μg以上のカロテンを含む野菜
と定義され、それ以下しか含まない野菜を「淡色野菜」と呼んで区別しています。
カロテン類は色素でもあり、これを多く含む野菜は緑や黄色が濃い傾向にあるので、こういう名前がついています。
ただし例外的にピーマンやトマトなど一部の野菜は、この条件を満たしていませんが(ピーマンは400、トマトは540)、日本人の食生活においては量をたくさん食べるので、十分なカロテンが摂れるとして緑黄色野菜に分類されています。
βカロテンの効力はレチノールの12分の1しかないが…
緑黄色野菜のビタミンAは、レチノールとしてではなく、βカロテンとして含まれています。
ところが、βカロテンは体内でビタミンAに変換される際に、レチノールのわずか12分の1の効力しか持たなくなります。
たとえばほうれん草は、可食部100グラムあたりβカロテンを4200μg含みますが、これがビタミンAに変換される際には、その12分の1である、レチノール350μg分に換算されます。
一方で、豚や鶏のレバーや、魚介に多く含まれるビタミンAはレチノールです。こちらは、吸収効率が非常に良く、70~90%が吸収されて利用されます。
ただし、βカロテンには、抗酸化作用という独自の働きがあるので、ビタミンAを摂取する際には、豚や鶏のレバーだけでなく、緑黄色野菜も多く摂るのが望ましいです。
ビタミンAの1日あたりの必要量と推奨量、耐容上限量
ビタミンAの1日あたり必要量
ビタミンAの1日あたりの必要量は、レチノール当量μgRAEで、
成人男性(18歳以上)550~650
成人女性(18歳以上)450~500
とされています(1000μg=1mg)。
ただし、個人差等を考慮して、ビタミンAの1日あたりの推奨量は、レチノール当量μgRAEで以下のとおりに算定されています。
ビタミンAの1日あたり推奨量
男性
18~29歳 850
30~49歳 900
50~69歳 850
70歳以上 800
女性
18~29歳 650
30~49歳 700
50~69歳 700
70歳以上 650
(妊婦は+80、授乳婦は+450)
ビタミンAの耐容上限量と過剰症
また、ビタミンAは脂溶性のため体内(特に肝臓)に蓄積され、摂り過ぎは過剰症の原因となりますので、耐容上限量があり、1日あたりおよそ2700μg(18歳以上、レチノール当量)以内に抑えることとされています。
ですので、レチノールを多く含む豚や鶏のレバー、サプリメントなどの摂り過ぎは禁物ということになります。
一方、緑黄色野菜のβカロテンなどカロテン類は、体内に蓄積はするものの、必要に応じてビタミンAへの変換量が厳密に調整されているので、過剰症になることはないようです。
ビタミンAの上手な摂り方
ビタミンAは脂溶性なので、油といっしょに料理すると効率よく吸収できます。
ですので、炒め物にしたり、ドレッシングやオリーブ油をかけたり、ゴマやアーモンドなどであえたりするとよいです。
ビタミンAの欠乏症・過剰症まとめ
ビタミンAは、皮膚や粘膜、目の働き、細胞の正常な分化に関係します。そのため、欠乏したり過剰だったりすると、以下のような症状を引き起こします。
ビタミンAの欠乏症
夜盲症(暗順応異常)
皮膚や粘膜の乾燥
呼吸器や泌尿器の機能低下
免疫力低下
生殖不能
子供の成長停止
ビタミンAの過剰症
脳髄液圧の上昇による頭痛、吐き気、嘔吐
子供の成長停止
体重低下
骨や皮膚の変化
脱毛
筋肉痛
関節痛
脂肪肝
甲状腺機能低下
胎児の奇形
ビタミンAまとめ
ビタミンAについて、以下に簡潔にまとめます。
ビタミンAの主な働き
目の暗順応を保つ(暗いところでも見える)
皮膚や粘膜の乾燥防止、免疫力の維持
細胞の分化、子供の成長
抗酸化作用(βカロテン)
ビタミンAを多く含む食品
動物性
鶏・豚レバー
銀だら、うなぎ
あんこうの肝
植物性
緑黄色野菜
海苔
ビタミンAの推奨摂取量(成人、レチノール当量)
男性 800~900μg
女性 650~700μg(妊婦は+80、授乳婦は+450)
耐容上限量は2700μg
ビタミンAを食べ物から上手に摂る方法
ビタミンAは脂溶性なので、油で炒める、ドレッシングやオリーブ油をかける、ゴマやアーモンドと合わせるなどで吸収効率が上がる。
↓↓各ビタミンの働き、多く含む食べ物や食べ方、欠乏症や過剰症などについて
脂溶性ビタミン
ビタミンAとβカロテン、抗酸化作用
ビタミンDと骨、カルシウム
ビタミンEと過酸化脂質、抗酸化作用
ビタミンKと骨、血液凝固、新生児
水溶性ビタミン
ビタミンB1とアルコール
ビタミンB2と脂質の代謝
ナイアシン(ビタミンB3)とアルコール、トリプトファン、抗酸化作用
ビタミンB6とアミノ酸、つわり、月経前症候群
葉酸と妊娠、DNA、動脈硬化
ビタミンB12と葉酸の関係、欠乏症、吸収消化の特徴
パントテン酸と糖質・脂質の代謝、神経伝達、善玉コレステロール
ビオチンと卵白、アトピー、血糖値、胎児
ビタミンCと抗酸化作用、コラーゲン、ストレス、鉄分の吸収