ダイエットや美容や健康・ヘルスケアにおいて特に注目を集めるのは、糖質や脂質の代謝に関わるビタミンB群、抗酸化作用を持つビタミンA・C・Eです。
これらに比べると、ビタミンDやビタミンKは目立ちませんが、私たちの健康に欠かせない役割を果たしています。
ビタミンKは、特に新生児やお年寄りにとって重要なビタミンとなるようです。
ここでは、ビタミンKの働きや、過剰症・欠乏症、多く含む食品、1日の摂取量、骨や血液凝固や新生児との関係などについて、簡単にまとめてみました。
ビタミンKとは
ビタミンKは、血液の凝固や骨の形成を助ける働きを持つビタミンです。
主に大豆製品(納豆など)や、葉物野菜や藻類などの植物性食品に多く含まれます。動物性食品では、鶏肉に多く含まれます。
ビタミンKは脂溶性です。同じ脂溶性ビタミンであるビタミンAとビタミンDは、摂れば摂るほどどんどん体内(主に肝臓)に蓄積して過剰症を引き起こします。
ビタミンAの働き、食べ物や過剰症・欠乏症まとめ
ビタミンDの働き。食べ物、取りすぎや欠乏症、カルシウムとの関係は?
ですが、ビタミンKに関しては過剰症のおそれはほとんどありません。
ビタミンKとして働く物質には、植物性食品に含まれるフィロキノン(ビタミンK1)とメナキノン類があります。
メナキノン類は、動物性食品に含まれるメナキノン-4(ビタミンK2)と、納豆に含まれるメナキノン-7があります。
植物性食品…フィロキノン(K1)
動物性食品…メナキノン-4(K2)
納豆…メナキノン-7
メナキノン-4は人間の体内でも腸内細菌によって合成されますが、必要量を十分に補えません。そのため、残りを食事から摂る必要があります。
抗生物質を長期間服用すると、腸内細菌が影響を受け、ビタミンKが欠乏するおそれがあります。
新生児の場合、腸内細菌が少なく、さらに母乳のビタミンK含有量も少ないため、欠乏症を予防するためにビタミンKのシロップを飲ませます。
ほとんどのビタミンKはフィロキノン(K1)もしくはメナキノン-4(K2)なので、ビタミンKの食事摂取基準は、このビタミンK1とビタミンK2の合計値で表します。
ただし、納豆は例外的にメナキノン-7を多く含むため、メナキノン-7の含有量に444.7/649.0(約0.685)を掛けた数値をメナキノン-4換算値として計算します。
参考までに、以下がビタミンKの構造式です。
ビタミンKの働き
ビタミンKの働きは、主に3つあります。血液の凝固、骨の形成、動脈硬化の防止です。
1.血液の凝固
出血の際に、傷口の血液が凝固するために必要な、血液凝固因子と呼ばれるたんぱく質があります。
ビタミンKは、プロトロンビンやその他の血液凝固因子を活性化するビタミンです。
そのため、ビタミンKは「止血ビタミン」という異称があります。
2.骨の形成
また、ビタミンKは、オステオカルシンと呼ばれる、骨の形成を促すたんぱく質を活性化し、カルシウムを骨に沈着させる働き(骨の石灰化)にも関わっています。
ビタミンDが「体内へのカルシウムの吸収」、ビタミンKが「吸収したカルシウムの骨への沈着」という役割分担をしており、ビタミンDもビタミンKも、骨の形成や成長には欠かせないビタミンです。
ビタミンDの働き。食べ物、取りすぎや欠乏症、カルシウムとの関係は?
なお、この働きのため、日本ではメナキノン-4(ビタミンK2)が骨粗しょう症の治療薬として処方されています。
3.動脈硬化の抑制
また、ビタミンKは、MGPと呼ばれるたんぱく質を活性化し、動脈にカルシウムが沈着すること(動脈石灰化)を防ぐ働きがあります。
動脈石灰化は動脈硬化の主要な症状の一つとして知られています。
ワーファリン(ワルファリン)とビタミンK
血栓ができやすい人に処方されるワーファリン(ワルファリン)という治療薬があります。
これは血液を凝固しにくくする薬なので、ビタミンKを摂取しすぎると効果が打ち消されてしまいます。
ですので、ワーファリン(ワルファリン)を服用している人は、納豆や葉物野菜など、ビタミンKを多く含む食品を摂り過ぎないように注意しなければなりません。
ビタミンKを多く含む食品
ビタミンKは、大豆製品や、葉物野菜や藻類、また鶏肉などに多く含まれます。
可食部100グラムあたりのビタミンK含有量(μg)は以下のとおりです。
糸引き納豆 600
ひきわり納豆 930
油揚げ 67
凍り豆腐(乾) 60
モロヘイヤ 640
あしたば 500
春菊 250
つるむらさき 350
水菜 120
バジル 440
大根の葉 270
かぶの葉 340
小松菜 210
豆苗 280
ほうれん草 270
乾燥わかめ 660
焼き海苔 390
味付け海苔 650
干しひじき 580
鶏もも肉 62
鶏手羽先 70
鶏むね 50
ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、ビタミンKはカルシウムの骨への沈着を促します。
そのため、骨の成長や形成のためには、ビタミンKを多く含む食品(葉物野菜、藻類、大豆製品など)だけでなく、ビタミンDを多く含む食品(魚介類、きのこ類)も合わせて摂る必要があります。
この点を見ても、「バランスのよい食事」がいかに大事か分かります。
ちなみに、大根やかぶの葉は、活性酸素を除去し(抗酸化作用)、細胞の老化を防ぐビタミンEも非常に豊富です。
ビタミンEの働きや1日摂取量、食べ物、取りすぎや欠乏症などは?
捨ててしまいがちな部位ですが、非常に優れた栄養源です。捨てずに炒め物やおひたしなどにして、新鮮なうちに食べるとよいでしょう。
フィロキノンとメナキノン類について
ビタミンKは植物性のフィロキノン(K1)と、動物性のメナキノン類があります。
フィロキノンと葉緑素
このうち、植物性食品に含まれるフィロキノンは、葉緑素から合成されるため、光合成をする緑色の野菜や藻類に特に多く含まれます。
メナキノンと微生物(納豆、発酵食品、腸内細菌)
一方、動物性食品に含まれるメナキノン類は、微生物によって合成されるので、鶏肉など動物性食品の他に、チーズや納豆などの発酵食品にも多く含まれます。
また、人体内では腸内細菌によってメナキノン-4が合成されますが、十分な量ではないため、残りを食事から補う必要があります。
新生児の場合は腸内細菌が少なく、さらに母乳のビタミンKの含有量が少ないため、ビタミンKシロップを投与して欠乏症を予防します。
ビタミンKの1日あたりの目安量、耐容上限量
ビタミンKの1日あたりの摂取基準は以下のとおりに算定されています。
ビタミンKの1日あたり目安量
18歳以上の男女 150μg
(妊婦は150、授乳婦は150)
ビタミンKは胎盤を通過しにくいという特性があるため、妊婦のビタミンKの摂取量は、胎児や新生児のビタミンKの栄養状態にあまり影響しません。
また、授乳婦についても、特にビタミンKが不足することはないとされています。
そのため、妊婦や授乳婦においても、通常と同じ150μgに設定されています。
なお、フィロキノン(ビタミンK1)とメナキノン(ビタミンK2)は、通常の食事では大量に摂取しても過剰症のおそれはほぼないと考えられているため、耐容上限量は特に設定されていません。
ビタミンKの過剰症
ビタミンKは、通常の食事で過剰症になるおそれはほとんどありません。ただし、サプリメントの摂り過ぎで急性の過剰症(貧血、血圧低下)を起こすことがあります。
ビタミンKの上手な摂り方
ビタミンKは脂溶性なので、油といっしょに料理すると効率よく吸収できます。さらに、熱にも強いため、炒めても成分が損なわれません。ただし、紫外線に弱いので、冷暗所に保存しましょう。
ビタミンKの欠乏症・過剰症まとめ
ビタミンKは、血液凝固因子の合成と、骨の形成に関わるビタミンです。
通常の食品からの摂取では欠乏症や過剰症は発症しにくいビタミンですが、腸内細菌により合成されるため、抗生物質を長期間投与し続けると、欠乏症のおそれがあります。
また、新生児は腸内細菌が少なく、母乳に含まれるビタミンKは少ないので、欠乏症予防のためビタミンKが投与されます。
もしビタミンKが欠乏した場合、以下のような症状を引き起こします。
ビタミンKの欠乏症
血液凝固の遅れにより出血しやすくなる
骨粗しょう症
頭蓋内・消化管出血(新生児)
ビタミンKの過剰症
通常の食事によるビタミンKの過剰症のおそれはほとんどありません。ただし、サプリメントの過剰摂取により、貧血や血圧低下のおそれがあります。
ビタミンKまとめ
ビタミンKについて、以下に簡潔にまとめます。
ビタミンKの主な働き
血液凝固因子の合成
骨の形成(カルシウムの沈着)
動脈石灰化(動脈硬化の一種)を防ぐ
ビタミンEを多く含む食品
動物性
鶏肉(もも、手羽先など)
植物性
葉物野菜、藻類、大豆食品(納豆など)
ビタミンKの1日の目安量
18歳以上の男女 150μg
(妊婦は150、授乳婦は150)
ビタミンKを食べ物から上手に摂る方法
ビタミンKは脂溶性なので、油と一緒に料理をすると吸収されやすくなる。
また、紫外線で分解されやすいため、冷暗所に保管すること。
↓↓各ビタミンの働き、多く含む食べ物や食べ方、欠乏症や過剰症などについて
脂溶性ビタミン
ビタミンAとβカロテン、抗酸化作用
ビタミンDと骨、カルシウム
ビタミンEと過酸化脂質、抗酸化作用
ビタミンKと骨、血液凝固、新生児
水溶性ビタミン
ビタミンB1とアルコール
ビタミンB2と脂質の代謝
ナイアシン(ビタミンB3)とアルコール、トリプトファン、抗酸化作用
ビタミンB6とアミノ酸、つわり、月経前症候群
葉酸と妊娠、DNA、動脈硬化
ビタミンB12と葉酸の関係、欠乏症、吸収消化の特徴
パントテン酸と糖質・脂質の代謝、神経伝達、善玉コレステロール
ビオチンと卵白、アトピー、血糖値、胎児
ビタミンCと抗酸化作用、コラーゲン、ストレス、鉄分の吸収