ビオチン(ビタミンH、ビタミンB7)は補酵素として、糖質・脂質・たんぱく質の代謝に欠かせないビタミンです。
皮膚や粘膜を保護し、アトピー性皮膚炎や血糖値の改善、健康な毛髪にも欠かせない栄養素として知られています。
その重要性にもかかわらず、従来の日本食品標準成分表には記載がなかったようですが、2015年の七訂版でついに掲載されました。
そんなビオチンの働き、食べ物、欠乏症や過剰症などについて、簡単にまとめてみました。
ビオチン(ビタミンH、ビタミンB7)とは
ビオチンは、三大栄養素である糖質・脂質・たんぱく質の代謝に関わるビタミンです。体内に取り込まれると、酵素たんぱく質と結合し、補酵素として働きます。
食品中のビオチンの多くがリジンやアビジンなどのたんぱく質と結合しており、消化の過程で遊離し、吸収されます。
さまざまな食品に含まれており、調理によって失われにくく、さらに腸内細菌でも合成されるので、一般的な食生活を送っていれば不足することはありません。
ただし、長期間抗生物質を服用していたり、大量の飲酒や喫煙をする人は、不足しがちになります。
また、大量の生の卵白を長期間摂り続けると、卵白中のアビジンというたんぱく質がビオチンと結びつき、吸収を阻害し、欠乏症に陥ります(卵白障害)。
ビオチンの構造式は以下のとおりです。
ビオチンの働き
ビオチンは三大栄養素である三大栄養素である糖質・脂質・たんぱく質の代謝に欠かせないビタミンです。
ビオチンが補酵素となって働く酵素はビオチン酵素と呼ばれます。主にカルボキシラーゼという酵素がこれに含まれます。
ビオチンはカルボキシラーゼの補酵素として、糖質がエネルギーに変わる過程でできた乳酸を、再び肝臓で糖質に作り変える「糖新生」や、クエン酸回路(TCA回路)を回転させるエネルギーを作るのに関わります。
ビオチンは抗炎症物質の生成に関わり、アレルギー症状を緩和したり、コラーゲンなどたんぱく質の生成に関わり、皮膚や粘膜の健康を保つ働きをします。
さらに、インスリンの合成を促し、血糖値を正常に保つという重要な働きもあります。
これらの働きにより、アトピー性皮膚炎や掌蹠膿疱症などの皮膚病の治癒や、血糖値の改善などが期待されます。
また、動物を用いた実験により、母親がビオチン欠乏に陥った場合、極めて高い確率で胎児の奇形が誘発されることが報告されています。
ビオチンを多く含む食品
ビオチンは、レバーや卵黄、ナッツ類、ヒラメやイワシなどの魚類に多く含まれます。
ビオチンを多く含む食品の、可食部100グラムあたりの含有量(μg)は以下のとおりです。(1000μg=1mg、1000mg=1g)
鶏レバー 232.4
豚腎臓 99.5
豚レバー 79.6
牛レバー 76.1
いわし(生)15.0
うなぎ蒲焼 10.4
ひらめ(養殖 生)10.1
からふとししゃも 17.1
ピーナッツ(乾)92.3
アーモンド(フライ味付け)61.6
ひまわり(フライ味付け)81.8
小豆 9.6
大豆(国産黄大豆 乾)27.5
納豆 18.2
全卵 25.4
卵黄 65.0
干ししいたけ 36.6
マッシュルーム 10.6
ビオチンの1日あたりの目安量は、18歳以上の男女で50μgです。健康な成人がバランスの良い食生活を心がけていれば、欠乏する心配はほとんどありません。
ビオチンの1日あたりの目安量、耐容上限量
ビオチンの1日あたりの目安量
18歳以上のビオチンの1日あたりの目安量(μg)は、以下のとおりです。
18歳以上の男女 50μg(妊婦は50、授乳婦は50)
詳しい表を以下に掲げます。
ビオチンと過剰症、耐容上限量
摂り過ぎた分は速やかに尿として排出されるので、通常の食品を摂取している人の過剰症の報告はなく、耐容上限量も設定されていません。
ただし、動物実験では、大量にビオチンを摂取することによる胎児の催奇性が認められています。
ビオチンの上手な摂り方
ビオチンはアルカリに弱く、熱や酸や光に強いビタミンです。そのため、比較的調理によって失われにくく、食品からの利用率は80%くらいと言われています。
重曹などのアルカリ性の添加物を使わない調理法で、バランスの良い食事を心がけていれば、通常不足することはありません。
ただし、生の卵白を大量に摂取すると、その中に含まれるアビジンという糖タンパク質が、ビオチンと強く結合し、吸収が妨げられてしまいます(卵白障害)。
また、抗生物質を長期間服用している人や、腸の調子が悪い人などは、腸内細菌によってビオチンが作られにくくなります。
ビオチンの欠乏症・過剰症まとめ
ビオチンは、主に体内でカルボキシラーゼと呼ばれる酵素の補酵素として働く、糖質・脂質・たんぱく質の代謝に欠かせないビタミンです。
ビオチンが欠乏したり過剰になったりすると、以下のような症状を引き起こします。
ビオチンの欠乏症
白髪
脱毛
皮膚や粘膜の落屑
湿疹
皮膚炎
筋肉痛
疲労感
食欲不振
体重減少
血糖値上昇
不眠
神経障害
ビオチンの過剰症
通常の食事をしている人の過剰症の報告はありません。
ビオチンまとめ
ビオチンについて、以下に簡潔にまとめます。
ビオチンの主な働き
カルボキシラーゼの補酵素として、糖質や脂質やたんぱく質の代謝に関わる。
皮膚や粘膜や毛髪の健康を保ち、アレルギー症状や血糖値の改善をもたらす。
ビオチンを多く含む食品
動物性
レバー
魚介類(イワシ、シシャモなど)
卵黄
植物性
豆類(あずき、納豆など)
きのこ類(マッシュルーム、干ししいたけなど)
ナッツ類(ピーナッツ、アーモンドなど)
ビオチンの1日あたりの目安量
単位はμg(1000μg=1mg、1000mg=1g)
18歳以上の男女 50μg(妊婦は50、授乳婦は50)
耐容上限量は設定されていない
ビオチンを食べ物から上手に摂る方法
ビオチンはアルカリに弱く、熱や酸や光に強いので調理によって失われにくい(利用率80%くらい)。
ただし、生の卵白を大量に摂取すると、ビオチンの吸収が阻害される。
↓↓各ビタミンの働き、多く含む食べ物や食べ方、欠乏症や過剰症などについて
脂溶性ビタミン
ビタミンAとβカロテン、抗酸化作用
ビタミンDと骨とカルシウム
ビタミンEと過酸化脂質と抗酸化作用
ビタミンKと骨と血液凝固と新生児
水溶性ビタミン
ビタミンB1とアルコール
ビタミンB2と脂質の代謝
ナイアシンとアルコール、トリプトファン
ビタミンB6とアミノ酸、つわり、月経前症候群
葉酸と妊娠、DNA、動脈硬化
ビタミンB12と葉酸の関係、欠乏症、消化吸収の特徴
パントテン酸と糖質・脂質の代謝、神経伝達、善玉コレステロール
ビオチンと卵白、アトピー、血糖値、胎児
ビタミンCと抗酸化作用、コラーゲン、ストレス、鉄分の吸収