リンは、カルシウムに次いで体内に多く存在するミネラルで、体内ではリン酸塩として骨や歯を構成したり、細胞膜や核酸(DNA)の成分としても欠かせません。
他に、神経伝達やエネルギー代謝、血液やリンパ液のpHの調整など、いくつもの重要な働きをもっています。
そんなリン(リン酸)の働きや効果、食べ物や欠乏症・過剰症などについて、簡単にまとめてみました。
リンとは
リンはカルシウムに次いで人体に多く含まれるミネラルで、成人の体内に最大850グラムほど存在します。
そのうちの85%が、カルシウムと共にハイドロキシアパタイトとして骨や歯の構成成分となっており、残りは細胞膜や核酸(DNA、RNA)の成分として全ての細胞内に存在しています。
食品からの利用率はおよそ60~70%くらいと言われています。
カルシウムとリンは同量摂取することが望ましいとされていますが、現代日本人はリンを摂り過ぎる傾向にあります。過剰摂取はカルシウムや鉄の吸収を阻害するので、注意が必要です。
リンの働き
リンは、カルシウムと共にハイドロキシアパタイトとして骨や歯をつくる以外に、細胞膜をつくるリン脂質として、またDNAやRNAなど核酸の構成成分として、全ての細胞内に存在しています。リン脂質が分解されてできる脂肪酸は、神経伝達に重要な役割を果たします。
また、解糖系を構成する物質や多くの補酵素の構成成分として、クエン酸回路(TCA回路)などの多くの代謝過程にかかわっています。
糖質・脂質・たんぱく質からエネルギーを得るために、体内でATP(アデノシン三リン酸)という物質が合成されます。リンはその構成成分として、エネルギーを蓄える働きをしています。
他に、血液やリンパ液などに含まれるリン酸塩は、酸と塩基のバランスをとり、浸透圧を調整する働きがあります(緩衝系)。
血清リン濃度や尿中リン排泄量は、副甲状腺ホルモン(PTH)や活性型ビタミンD等によって主に調整されています。
リンが欠乏すると、神経症状、食欲不振や体重減少、筋萎縮が起こり、長期化すると骨の石灰化が阻害され、骨軟化症などを引き起こす恐れがあります。
リンを多く含む食品
リンは肉や魚、大豆製品、乳製品などのたんぱく質に広く含まれています。
それ以外にも、食品添加物(リン酸塩)として、様々な加工食品やインスタント食品に含まれており、こちらからの過剰摂取に気をつける必要があります。
リンを多く含む食品の、可食部100グラムあたりの含有量(mg)は以下のとおりです。(1000mg=1g)
ドジョウ水煮 750
するめ(加工品)1100
ウナギ蒲焼 300
イワシ丸干し 570
メジマグロ 290
キンメダイ 490
シシャモ(生干し)430
大豆(国産・乾)490
木綿豆腐 110
牛乳 93
プロセスチーズ 730
牛レバー 330
豚レバー 340
鶏レバー 300
ボンレスハム 340
玄米 290
そば(乾)230
リンの1日あたりの目安量、耐容上限量
リンの1日あたりの目安量
18歳以上のリンの1日あたりの目安量(mg)は、以下のとおりです。
18歳以上の男性 1000mg
18歳以上の女性 800mg(妊婦、授乳婦の付加量なし)
妊娠によって必要量が変わるという報告は今のところなく、妊婦の付加量は0に設定されています。
また、授乳中は母乳への損失があるものの、骨の吸収量の増加や尿中への排泄量の減少で補っており、血清のリン濃度は高水準のため、授乳婦の付加量も0に設定されています。
詳しい表を以下に掲げます。
リンと過剰症、耐容上限量
リンの1日の耐容上限量は、18歳以上の男女共に3000mgです。
リンは食品添加物(リン酸塩)として多くの加工食品に含まれており、現代日本人はリンを過剰摂取しやすい環境にあります。
リンの過剰摂取は腸管からのカルシウムの吸収を抑制します。さらに、リンを1日2グラムを超えて摂取すると、血清リン濃度の制御のため副甲状腺機能が亢進します。
副甲状腺機能が亢進すると、骨からカルシウムが溶け出し、骨密度の低下を引き起こす恐れがあります。
また、副甲状腺ホルモンは腎臓におけるリンの再吸収を抑制し、リンの尿中への排泄を促す働きがありますが、過剰分泌が長期間続くと、腎機能の低下を引き起こす可能性があります。
腎機能が低下すると、高リン血症になり、血中のリンとカルシウムが結合して石灰化し、動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞を引き起こす危険性が高まります。
リンの上手な摂り方
リンは肉や魚や乳製品、穀類や大豆製品など幅広い食品に含まれ、さらにリン酸塩添加物としてインスタント食品や加工食品に多く含まれるので、不足することはほとんどありません。
むしろ、現代人はこれら添加物からのリンの摂取量が過剰になりやすい傾向にあります。
過剰なリンの摂取は鉄分やカルシウムの吸収を阻害しますので、貧血気味の人や成長期の人、高齢者などは、これらインスタント食品・加工食品からのリンの摂り過ぎに気をつけましょう。
リンの欠乏症・過剰症まとめ
リンが欠乏したり過剰になったりすると、以下のような症状を引き起こします。
リンの欠乏症
神経症状
食欲不振
体重減少
筋萎縮
骨の石灰化の阻害
骨軟化症
リンの過剰症
腎機能低下
副甲状腺機能の亢進
カルシウムの吸収抑制
リンまとめ
リンについて、以下に簡潔にまとめます。
リンの主な働き
骨格形成(ハイドロキシアパタイト)
細胞の成長・分化(リン脂質、核酸)
神経の正常な機能(リン脂質)
エネルギー代謝(解糖系、クエン酸回路、ATP)
リンを多く含む食品
レバー
魚介類(するめ、いわし丸干しなど)
大豆製品(木綿豆腐など)
乳製品(牛乳、プロセスチーズなど)
穀類(玄米、蕎麦など)
リンの1日あたりの目安量
単位はmg(1000mg=1g)
18歳以上の男性 1000mg
18歳以上の女性 800mg(妊婦、授乳婦も同じ)
耐容上限量は18歳以上の男女ともに3000mg
リンを食べ物から上手に摂る方法
リンは加工食品やインスタント食品などの添加物として多く含まれるため、不足することはほとんどない。むしろこれらの食品を通じた過剰摂取の方を心配するべき。
↓↓各ビタミンの働き、多く含む食べ物や食べ方、欠乏症や過剰症などについて
主要(多量)ミネラル
カルシウムと骨、ビタミンD、エストロゲン
リンと骨、細胞膜、DNA、インスタント食品
脂溶性ビタミン
ビタミンAとβカロテン、抗酸化作用
ビタミンDと骨とカルシウム
ビタミンEと過酸化脂質と抗酸化作用
ビタミンKと骨と血液凝固と新生児
水溶性ビタミン
ビタミンB1とアルコール
ビタミンB2と脂質の代謝
ナイアシンとアルコール、トリプトファン
ビタミンB6とアミノ酸、つわり、月経前症候群
葉酸と妊娠、DNA、動脈硬化
ビタミンB12と葉酸の関係、欠乏症、消化吸収の特徴
パントテン酸と糖質・脂質の代謝、神経伝達、善玉コレステロール
ビオチンと卵白、アトピー、血糖値、胎児