ダイエットに挑んだほとんどの人が、停滞期というものを経験しています。
それまで数ヶ月間に渡って、順調なペースで体重が落ちていたのに、ある時期を境に、急に変化しなくなります。
増えはしないが、減りもしないのです。
同じような節制した生活を続けていたはずなのに、どうして!?
そんな絶望的な思いにとらわれてしまい、心が折れてしまう人が続出するのが、この停滞期です。
しかし、これはホメオスタシスと呼ばれる、私たちの身体の一種の防御機構が深く関係しているのです。
ホメオスタシスとダイエット停滞期との関係、その対策について述べてみたいと思います。
ホメオスタシスとは?
ホメオスタシスは、日本語では「恒常性」と訳されます。
「恒常」を辞書で引くと、「変化がなく、いつも一定であること」と説明されています。
つまり、ホメオスタシスとは、「周囲の環境の変化に関わらず、肉体が一定の状態を保ち続けようとする性質」のことを言います。
ダイエットでは、それまでより大幅に摂取カロリーが制限され、体重や体脂肪が急速に減少していきます。
ダイエッターにとっては喜ばしいことなのですが、私たちの肉体はそうは判断しません。
以前よりも食べ物の摂取が大幅に減少したことから、極端な飢餓状態であると判断してしまうのです。
するとどうなるか。
飢餓状態で摂取カロリーが大幅に減ってしまったのだから、それに合わせてできるだけ貴重なカロリーを消費しないように、節約しようとするのです。
具体的には、基礎代謝が大幅に落ちてしまいます。
基礎代謝とは、簡単に言うと、私たちの身体が生きている限りは最低限消費され続けるカロリーのことです。
じっと横たわっていても、心臓は動き続け、呼吸のために横隔膜を動かし続け、脳や肝臓その他の臓器は働き続け、細胞の一つ一つは呼吸をし、熱を生み出し続けます。
そうやって、何もしなくても、生きている限りは絶え間なく消費され続けるエネルギーが基礎代謝です。
この基礎代謝は、1日の消費カロリーの総量の実に7割を占めると言われています。
>消費カロリーと摂取カロリーの内訳。基礎代謝が占める割合は?
飢餓状態と判断すると、私たちの肉体は、まずこの基礎代謝のレベルを落とすのですね。
その結果、同じような食生活を送っていても、以前のようには体重が落ちてくれなくなるわけです。
いわゆる、「燃えにくい身体」に体質が変化してしまうわけです。
ダイエットでホメオスタシスが発動する条件とは?
とは言え、このホメオスタシスが発動して基礎代謝が落ちてしまうという現象は、そう簡単には起きません。
それは、環境が極端に変わったときに限られます。
ダイエットで言うと、1ヶ月で体重の5%以上減量するような過激なダイエットを行うと、発動しやすいと言われています。
体重70キロの人なら3.5キロ、体重60キロなら3キロ、体重50キロなら2.5キロ以上ですね。
1ヶ月で3キロと言うと大したことなさそうですが、脂肪1キロが約7200kcalなので、1ヶ月を30日として、1日当たりのカロリーを計算してみると、
7200×3÷30=720kcal
になります。
成人男性・女性の1日あたりの消費カロリーはそれぞれ、2300kcal~、1700kcal~とされています。
もちろん、体格や年齢や普段の活動量によっても変わってきますが、目安としては、男性なら1日の摂取カロリーを1600kcal、女性なら1000kcalを下回らないように気をつけた方がよい、ということですね。
ホメオスタシスが発動してしまったら?
ダイエットでは、このホメオスタシスの発動が手強いので、そもそも極端なカロリー制限をしないことが肝要です。
1日あたりのカロリー収支はせいぜい3~400kcalのマイナスくらいに収めておくべきでしょう。
1日300kcalは、1ヶ月で9000kcal。体脂肪に直すと、9000÷7200=1.25kgくらいです。
1日400kcalなら、1ヶ月で12000kcal。体脂肪に直すと、12000÷7200≒1.67kgくらい。
このくらいなら、ホメオスタシスも発動せず、精神的にも肉体的にも辛くならず、無理なくダイエットを続けることができると思います。
しかし、もしすでに極端なカロリー制限をしてしまっていて、ホメオスタシスが発動してしまったのなら、どうすればいいのでしょうか?
そのときは、少しずつ摂取カロリーを増やしていって、ホメオスタシスを解除するのがよいです。
たとえば、毎日のカロリー収支が1000kcalのマイナスになっているなら、次の日から950、900、850、…、500、450、400、という具合に、ちょっとずつカロリー収支の差を調節していって、適正な値に持っていきましょう。
>カロリー計算の仕方について。オススメの方法は?
なお、それまで1000kcalのマイナスだったのを、いきなり400kcalに持っていくのは危険です。
その600kcal増やしたうちの大部分が、まるまる脂肪として蓄えられてしまう恐れがあります。
ホメオスタシス発動中で、基礎代謝が下がった状態なわけですからね。
こうやってホメオスタシスを解除すれば、基礎代謝が元の水準に戻り、停滞期を脱することができるはずです。
ダイエット停滞期はどのくらい続くのか?
ダイエット停滞期は大体1ヶ月くらい続くケースが多いようですね。
この1ヶ月を乗り越えられれば、後はそれまでどおり、スーッと体重が落ちていくはずです。
それまでは、決して諦めずに、しっかり調整していきましょう。
個人的に思うのですが、「単純に食べる量を極端に減らして空腹をひたすら我慢する」という、素朴なスタンスでダイエットに取り組むと、停滞期突入→心が折れて挫折、のパターンに陥りやすいのではないでしょうか。
根性論だけで突っ走ってしまった場合、と言い換えることもできます。
そこには痩せるしくみに対する理論的な理解が不足しているため、いざ壁が立ち現れたときに、原因も対処法も分からず、単純に数字だけを見て「もう無理だ」と諦めてしまいやすいのだと思います。
そうならないためにも、「人はなぜ、どのように太ったり痩せたりするのか」に対する理論的な根拠をしっかりと学ぶことが必要なのだと思います。
そして、学んだことをしっかりアウトプットして実践していくことです。
単に食事を減らし、体を動かすだけでも、確かに体重は減らせます。
しかし、そうやって学んだ知識を元に、しっかり自分の頭で考え、時おり訪れるイレギュラーな問題にしっかり対処していく、ということができなければ、ダイエットという長丁場を乗り切ることは難しいのだと思います。
何となく勢いで2、3kg減らすのは簡単です。
しかし、5kg、10kg、20kgを減らして、しかもその先5年も10年もリバウンドしない、という状態に持っていくためには、それは絶対に欠かせないことです。
そういう意味で、ダイエット停滞期は、それまでの自分のスタンスを見直し、以降のダイエット生活の質を大幅に向上させるための、非常に良いきっかけになるはずです。
ホメオスタシスは悪者か?
ここまでの話を聞くと、ホメオスタシスという性質は、ダイエットを邪魔する厄介者という印象を受けてしまいます。
しかし、そもそもホメオスタシスというのは、「周りの環境が劇的に悪化しても肉体の状態だけは悪化させずに一定に保とう」という生存のための防御機構です。
現代の私たちは飽食の時代を生きていますが、このような時代や環境は、極めて特異なものです。
実際には、人類の歴史の大部分は飢餓との闘いだったわけです。
このホメオスタシスがあるからこそ、人は食糧不足に陥っても、そう簡単には餓死しないわけです。
寒くなったら熱を生み出すために身体が震える、暑くなったら体温を下げるために汗をかく、というのも、すべてホメオスタシスの一種と言えます。
そう考えると、摂取カロリーが極端に落ちたら基礎代謝が下がるというのは、生存のための当然の身体反応と言えます。
この防御機構をいかに刺激せずに、体重を落としていくかが工夫のしどころです。
まとめ
ダイエット停滞期は、極端なカロリー制限を行った場合に起きやすいです。
その理由として、飢餓状態にあると判断した肉体が、貴重なカロリーを節約するために、基礎代謝のレベルを落としてしまうことが挙げられます。
この働きをホメオスタシスと言います。
ホメオスタシスは生存のための肉体の防御機構で、ダイエットはある意味それに逆らう行為なわけです。
ですから露骨に摂取カロリーを減らしすぎると、ホメオスタシスの発動を招いてしまいます。
これがダイエット停滞期の大きな要因となっています。
停滞期の対策としては、
1.摂取カロリーと消費カロリーの差を1日あたり300~400kcal程度に抑える
2.ただし、急激に戻すのではなく、少しずつ戻していくこと
こうすれば、ホメオスタシスを解除することができるはずです。
ダイエットによる減量は1ヶ月に1~2kg程度に抑えた方がよい、と言われますが、ホメオスタシスはその大きな理由の一つと言えます。
さて、ダイエット停滞期には、ホメオスタシスのような肉体的な要因の他に、精神的な側面、つまり気の緩みや自信喪失によるものも無視できないと思います。
メンタル面での停滞期の要因と対策についてはこちらをどうぞ。